06. 11/19(水) 2日前




昨日は、図書室でしこたま怒られ、帰りは手を繋いでもらえなかった。
「誰も見てなかった」と言っても「そういう問題じゃない!」と大ブーイング。
プリプリ怒りながら歩くの後ろ姿を眺めながら家まで送って行った。
行き場のない左手をポケットに突っ込んで。







(あいつ……)



放課後、日誌を出しに行ったを教室で待ってたが、なかなか戻ってこない。
何かあったのか?
そう思って様子を見にきたら職員室の手前で見覚えのあるヤツと楽しそうに話し込んでいた。
緑のエプロンをつけた体も声もデカいおせっかいなヤツ。



「お、よう、勝己!」

「………元春、配達か?」

「そ!今終わったとこ。勝己は……ってなーに睨んでんだよ」

「………うるさい」



オレが不機嫌なのを自分が遅いせいだと思ったのか、がトトッと寄って来てクイッと袖を引っ張った。



「ごめんね。先輩に会ったの久し振りだったから、つい話し込んじゃって……」

「別に、いい……のせいじゃねぇ」

「はいはい、オレのせいですね。まったく勝己くんはヤキモチ焼きだねー」

「勝己くんって呼ぶな」

も大変だよなあ?ヤキモチ焼きの彼氏でさ」

「え?そそそんなこと無いですよ?」

、日誌。若王子先生帰っちまうぞ」

「あ!そうだった!じゃ、先輩またね!」

「おう、またな!」

「………」

「ん?なんだあ?ジッと見たりして。オレそんなにいい男か」

「………アホ」

「なんだとー」



昔、誰とでも仲良くなって人の輪に入っていける元春に憧れたことがある。
けど………こんなアホを見習わなくてよかった。
教室へ戻るために歩き出したら元春もついて来た。



「ついてくるな」

「いいだろ、久し振りに教室見たいんだよ」

「花屋、早く戻らないと怒られるんじゃねえのか」

「お、心配してくれんのか!優しい弟を持って兄ちゃんは幸せだよ〜」

「弟じゃない。心配もしてねえ。………邪魔なだけだ」

「うおっ!ストレートだな!アイタタタ………」

「いつまでふざけてんだ。もう帰れ」



コイツとしゃべるときは本音が出せる。
遠慮する必要もねぇから気が楽だ。

だが今日のオレはイライラしてた。
昨日手を繋げなかった分、今日は一分でも早く二人になりたいと思ってた。
それをコイツが邪魔した。

大体コイツはになれなれし過ぎる。
兄貴ぶってんのか知らねぇがの名前を軽々しく呼ぶし頭をなでたりする。
名前、オレは未だに言えねぇのに………。



「なにイライラしてんだよ?」

「別に………」

「あさって誕生日だろ?もっと幸せそうにしろよ!」

「よく覚えてたな、オレの誕生日」

「まーな!………、張り切ってたもんなぁ」

「張り切ってた?」

「ん?あ、いや、………」

「なんで元春がそんなこと知ってんだ?久し振りに会ったと言ってただろ、さっき」

「あー……オレ、そろそろ店に戻らないとなー、はは」

「待て。答えろ」

「電話がきた」

「なんて」

「勝己の欲しいものが分からないーって」

「それで」

「あんまりしつこく聞くから教えた」

「おまえのせいか………ハァ………」

「オレのせいじゃないぞ。元はといえば、勝己が『欲しいものあるけど言わない』ってに言ったからだろうが」

「………言った」

「で、は分からないからオレに相談して来ただけだろ?」

「………」

「な!だから勝己自身のせいなの。オレは悪くない、だろ?」

「………」

「というわけで店に戻るわ。じゃーな!誕生日あんまし無茶すんなよー!」



オレのせい………?
なんだかうまく丸め込まれたような気がする。











今日の寄り道は森林公園。
昨日のことは許してもらえたみたいで学校からずっと手を繋いでここまで来た。
赤や黄色に色づいた木々を眺めながら落ち葉を踏みしめてゆっくり歩く。
空には茜雲。
オレンジ色の世界。



「さむっ………急に冷え込んできたよね」

「ああ………もっとそばに来い」



そう言って大きな木に寄りかかりながらをそっと抱き寄せた。
触れてる部分のやわらかさに理性が飛びそうになるが、確認しておかなきゃいけねぇことがある。





「なあに?」

「おまえ、ムリしてねぇか?」

「なにを?」

「プレゼントのこと」

「え?!そ、その話?ムリなんてしてないよ」

「元春に聞いたからムリしてプレゼントしようなんて考えたんだろ?」

「あ!先輩、相談したのばらしちゃったの?」



もう先輩ってばとブツブツ言いながら次にどう答えようか考えてるみたいだった。

やっぱりな。

自身の考えじゃねぇなら、ムリしてくれなくてもいい。
今ならギリギリ我慢できる。



「確かに先輩に聞いた時は『ムリー!』って思った」

「だろ。だったら−−−」

「でもね………勝己の喜ぶものをあげたいの」

「オレは何でもいいって言ったろ。別に他のものでもいいんだ」

「でも一番欲しいものをあげたいの。あ、それとも私は一番じゃない、とか?」

「そんなの………一番に決まってるだろ」

「それとね、えーっと………なんて言ったらいいんだろ………」

「?」



恥ずかしそうにモジモジしてる
何が言いたい?
俯いててよく分からないが耳まで赤くなってくみたいに見える。



「なんだ?」

「あの、ね?……勝己は、そのー、私とキスしたり……とかするとどんな感じがする?」

「………気持ちいい、って言えばいいのか?」

「う、うん」

「それから体のアチコチが熱くなってナニがヤバイことになる」

「!!……か、勝己のエッチ!!」

「おまえが言えって言ったんだろ」

「あ………そうだった、えへへ」

「それがなんなんだ、いったい」

「えーっと、つまり………私も同じ………みたいな?」

「は?」

「い、一回で分かってよ、もうっ」



つまり、も気持ちよくて熱くなってナニが−−−



「そこは違うから!」

「………思考を読むな」

「だから………その………」



たまらなくなってギュっと力いっぱい抱きしめた。
したいって考えるのは男のオレだけだと思ってた。
同じなのか?
本当に?



「変………だよね、私………」

「変じゃない。うれしい」

「引かない?嫌いにならない?」

「もっと好きになる」

「ホント?」

「………好きだ」



顔をあげさせ唇をふさいでいつもより激しくキスをする。
舌を滑りこませアイツの口の中を隅々まで愛撫する。



「………ん……ぅ………」



抱きしめていた腕の片方を前にまわしてふくらみをそっと包む。
反応を確かめながら力を加減してやわやわともむ。

声が聞きたくなって唇をずらして色んなとこにキスした。
頬、耳、首すじ………舐めたり甘噛みしてが感じるところを探す。



「はっ………あっ………はぁ………」

「気持ちいいか?」

「ん………」



時折ピクッと動く体が可愛くてアイツを抱き寄せている片腕にグッと力を入れる。
もっと感じて欲しい。
オレももっと感じたい。
ふくらみにおいてあった手を下に滑らす。
スカート越しにももの辺りをなでようとしたら「待って!」とその手をつかまれた。



「なんで?いいだろ?」

「あ……や、だめ!ホント、ストップ!ストーップ!!」



あまりの激しい抵抗に仕方なく手を引っ込めた。



「ああああとは誕生日に、ね?」

「やだ。我慢できねぇ」

「ええっ?!そこは我慢しとこうよ、誕生日プレゼントなんだし」

「今欲しい」

「それじゃプレゼントの意味ないじゃん!」

「プレゼントはプレゼントだから大丈夫だ」

「何その理屈!お小遣い前借りみたいなのはヤダ!!」

「どうしてもダメか?」

「どうしてもダメ!」

「おまえだって気持ちよかったくせに」



耳元に口を寄せて言ってみたらピクリと反応したから、もう一回と思いながら首すじに口を寄せていった。



「勝己のバカーーーー!!!」



キーン
キーン
キーン

思いっきり耳元で叫ばれて痛ぇ………。



「お、同じって言ったけど、でも、恥ずかしいんだからねっ!!」

「分かったから、怒鳴るな………」

「ホントに分かったの?」

「ああ………そのかわり………」

「な、なに?」

「誕生日はストップって言ってもきかねぇからな」

「あ、あはは………だ、ダイジョブ、だと思う」



なんだか頼りねぇ返事だがオレはもう抑えるつもりはないからな。
ダメだなんて言わせないぐらい可愛がってやろう。