08. 11/21(金) 誕生日☆その1☆
誕生日なんてただの数字の羅列、目安に過ぎない。
そう思ってた昔のオレ。
けど今は………と、昔と今のオレの違いについて考えたアイツの誕生日。
その違いに気付いて誕生日に意味があると知ったあの日。
オレがそう思ったように、アイツもオレの誕生日を大事に思ってくれてる。
プレゼントなんて本当になんでも良かったんだ。
アイツから貰えるならなんだって嬉しいと思える。
一緒に祝ってくれればそれが一番だと思ってた。
だけどアイツはオレの欲しいものをくれると言う。
そのときの事を考えて眠れない夜が続いたが、それももうすぐ夢じゃなくなる。
真っ暗な部屋のベッドの上で、そんな事をボンヤリ考えていた真夜中、不意に携帯が光った。
(メール………)
携帯を開いてその文面に顔がにやける。
===
Date:2008/11/21 0:00
From:
Sub:Happy Birthday!
−−−
18歳のお誕生日おめでとう(^^)v
勝己の18歳が素敵な1年になるよう
今日は全力でお祝いするから楽しみにしててね!
===
全力で?
楽しみに?
…………って、オレを煽ってんのか?
まったく、アイツは………。
一人、部屋の中でくつくつと笑いが収まらなかった。
ドキドキが朝からおさまらなくて勝己の顔もまともに見れない。
毎日ドキドキしてたけど、今日はもういつ心臓が止まってもおかしくないほどずーっとドキドキしてる。
授業も何時間目なんだか分からないし、昼休みも箸が止まってボーっとしちゃってはるひにつっこまれるし………。
気が付いたら帰りのホームルームが終わってて………。
私の頭をポスッと勝己が叩いて「帰るか」と言われた時はきっと挙動不審だったと思う。
手を繋いで家までの道をゆっくり歩く。
あれ?
そういえば………
「ね、勝己?」
「どうした?」
「いつもよりゆっくりだよね?」
「ん?………ククッ」
「ええ?何がおかしいの?」
「が緊張しまくってるから、落ち着けー落ち着けーってテレパシー送ってたんだけど、やっと気が付いたか?」
「て、てれぱしい?………プッアハハハ!勝己がテレパシーって、アハハ!」
「………そこまで笑うか?」
「だって………おかしいっ……アハハハハ!」
私、ちゃんとお祝いしようと思ってたのに、逆に気を使わせちゃってるじゃん。
ドキドキするけど今日の主役は勝己だもんね。
うん、しっかりしなきゃ。
少しだけ冷静になって勝己をよく見てみたら勝己のほっぺもいつもより赤い。
それがなんだか可愛くて嬉しくなってきた。
「あれ?なに?その紙袋???」
「ああ……なんか、渡された、色々」
そういえばドキドキでボーっとしていた時に何回も勝己呼ばれてたっけ。
って事は、それ全部プレゼントとか手紙とかカードとか、なのか。
みんなすごいな。
ちゃんと自分で考えてプレゼントして。
私なんか誰かに聞いて決めただけ。
でもそれが勝己の欲しいものならいいかって思って。
自分じゃ何にも考えてない。
私ってダメダメ?
「おい、?」
「………ん?」
「こういうの嫌だったら、全部返すから」
「え?いいよ!そんなことしなくて!!」
「考えこんでただろ、今」
「あー、うん。なんか、みんなに比べたら私はあんまり考えないでプレゼント決めちゃってダメだなーって思ってたの」
「あのなぁ………変なことで落ち込むな」
「でも………」
「沢山考えたかとかじゃねぇだろ?」
「じゃ、なに?」
「オレが嬉しいかどうかだろ」
「………そう?」
「そうだ。早く喜ばせてくれ」
「!!」
また、いきなり、そんなこと言う!!
せっかくちょっと落ち着いてた心臓がバクバク言い始めたじゃん!
心臓に悪いよ、もうっ!!
「でも、ちょっとは気になるよ、それ」
とオレの持ってる紙袋をチラッと見ながらは言う。
やっぱり全部受け取らなかった方が良かったのかもしれねぇ。
コイツが辛いと思うぐらいなら、オレが「酷い男」と言われた方が百倍マシだ。
「憧れとか、ファンとか、そういう気持ちの贈り物は全然大丈夫だけど…………勝己のこと本気で好きでっていうやつだったら、ちょっと、怖い」
「こわい?」
「うん。だって、もしも、その子が勝己の好きなタイプだったら、って思うと、ね」
「ハァ………」
「う………なんで溜息?」
「オレの好きなタイプ、教えてやろうか?」
「だって、聞いたら後悔するって言ってたし、前………」
「あん時は言ったらばれると思ったからな」
「何が?」
「オレの気持ち」
ここまで言ってもクエスチョンマークを飛ばしてるに苦笑する。
そんなおまえがオレのタイプなんだって、ずっと前からそうだったって言ったら信じるか?
「とにかく、おまえはもうちょっとオレを信じろ。なんか貰ったとしてもおまえからじゃねぇと意味がない」
ギュッと繋いだ手に力を入れたら「わかった、信じてる」と握り返してくれる。
その小さな力をいつまでも大切にしたいと強く思う。
「ジャーン!」
今朝、早起きして生クリームとイチゴでデコレーションしたケーキ。
ちょっといびつな所もあるけど、結構がんばったし、何より気持ちがこもってて美味しい!はず。
「すげぇ………ホントに作ったのか?これ?」
「えへへーん!」
「へぇ………サンキューな」
「ろうそく点火〜!」
ハッピーバースデーを大声で歌ったら聞いてる方が恥ずかしいとか言われたけど気にしない気にしない!
ケーキ食べて紅茶飲んで………。
「うまかった、ごちそうさん」
「おいしかった?よかった〜」
えっと、ケーキは食べた。
紅茶のカップはもう空っぽ。
おかわりは………要らないよね。
どうしよう………私から「プレゼント受け取って」って言わなきゃいけないのかな?
そんなの恥ずかしくてできないんだけど………。
ホント、どうしたらいいのー?!
私の部屋はいつもと同じはずなのにだんだん緊張してくる。
「」
「ひゃっ?!」
「ひゃ………って、おまえ、ククッ」
「だだだって、緊張してるんだもんっ」
「ククク………まあ、オレも緊張してる」
「勝己も?」
「ああ」
カエルちゃんテーブルの向こう側に座ってた勝己が、こっちに、来る。
真剣な目。
やっぱりちょっとこわいかも。
緊張して全身が強張ってる。
いきなり体がフワッと浮いてベッドに運ばれた。
もう?いきなり?いきなりなの?
「か、勝己?」
四つんばいになって私を見下ろしている勝己。
その表情が笑ってなくて優しく見えなくて怖い。
怖いからギュッと目を瞑った。
「フッ………」
え?笑われた?なんで?
………って、うわわっ!!!
「や、やめてーーー、アハハハハハハ」
いきなり全力でくすぐられて、ちょ、やーーー!!
「いやーハハハハ、くすぐったいってば、死ぬ!死ぬから、やめてー!アハハハ」
「おまえ、緊張し過ぎなんだよ。ほぐしてやる」
「や、ハハ、め〜〜〜、ハハハ!う〜〜〜反撃してやる!」
「全然くすぐったくねぇ」
「むー、じゃ、髪グシャグシャにする」
「おい!やめろ、こら!」
ベッドの上を転がりながらじゃれあって最後は勝己に抱き締められてゲームセット。
フフッ………なんか、こういうのがいい。
背中にギュッとまわしてた手を緩めて少しだけ起き上がる。
「勝己、大好き。誕生日おめでと」
私からキスする。
恥ずかしいからチョンって触れるだけ。
「サンキュ。オレも、好きだ」
フワッとしたあったかくて優しいキス。
「好きだ」
食べられちゃうんじゃないかって思うようなキス。
唇に触れる勝己の熱い舌にじんと体が痺れる。
「好きだ………」
「あ………」
初めて呼ばれた名前にビックリして、でもすごく嬉しくて、ホントに嬉しくて、涙がにじんだ。
私の方がプレゼント貰っちゃったみたい。
「なんで泣く?」
「うれしいから」
「いくらでも言ってやる……、好きだ」
何度も唇を重ね、深いキスをして、名前と甘い言葉を耳元で囁かれ、体が熱く溶けていく感覚に身を任せた。
(つづく)
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