よろしく、友達



学校の中庭で緑色のエプロンを着けた大きな男の人を発見。



「真咲先輩!」

「お、よう!今から部活か?」

「先輩は配達ですか?」

「そ!あ、おまえに会えてちょーど良かったわ。コレ、明日、勝己に渡しといてくんないかなぁ?」

「なんですか?」

「明日、勝己の誕生日だろ。オレからのプレゼント」

「なんで私が渡すんですかー?先輩、自分で渡せばいいじゃないですか!」

「オレから渡すより女子から渡した方が勝己もうれしいだろ?」

「はぁ?」

「それに明日は大学と飲み会で忙しいの、オレ」

「はぁ………」



志波とはクラスも違うし、最近になってやっと普通に喋れるぐらいの仲になった程度。
でも、はるひや針谷と一緒に遊園地に行ったりしたし、友達というカテゴリーに入っていると言えるのかな?
そんな私が渡したって別に嬉しくもなんともないと思うけど………。



「フゥ………先輩の頼みなら仕方ありませんね。………で、なんなんですか、中身?」



渡されたものは、特にプレゼント用の包装もされていない。
紙袋に入っているだけの中身………見てみたいー!



「出して見ていいぞ」

「わーい………ってなんですか、コレ………アハハハ!」

「ああ、そっちはジョークな。本当のプレゼントは2つ目のヤツ。オレのお勧め」

「そうかそうか………むしろ1つ目だけでも………フフフ」

「いやぁ、いくらなんでも誕生日だしかわいそうだろ、それだけじゃ」

「先輩優しいですねぇ!」

「はははー、まーな!じゃ、よろしくな!」

「はーい!」



誕生日プレゼントか………。
なんか勢いで預かってしまったけど、明日、これだけを「預かったよ」って渡すのもあれかな?
誕生日って知ってて私からは何もプレゼントしないのもちょっと酷いよね。
うーん………なんか用意した方がいいか。
部活帰りに商店街に寄ってみようかな………。











そして翌日、相変わらずボーッと無表情で歩いてる志波を廊下で捕まえた。



「志波!」

「ああ………そんなに急いで、どうした?」

「これ、誕生日プレゼント。はい!」

「誕生日?………覚えてたのか」

「まあ、一応ね」

「もらっていいのか?」

「もちろん!」



と言って渡したのは真咲先輩からのプレゼント。
ふふふ、どんな反応するか楽しみ。
ワクワクワクワク。



「………いい趣味してるな。とりあえずもらっとく」

「ふふ………アハハハ!」

「なんだ?なんで笑う?」

「それ!真咲先輩からのプレゼントなの!!」

「元春………?」

「そ!あ、ちなみに1つ目のはジョークって言ってたから、本気にしないでね!」



1つ目のは「笑顔の作り方講座」っていうDVD!!
さすがにジョークがきつかったのか、かなり不機嫌な反応だった!
あとで真咲先輩へ報告しよっと………フフフ。
2つ目は真咲先輩お勧めDVD。
有名なサスペンスホラーのタイトルがついていた。



「で、こっちが、私からのプレゼント〜!」

「あ………サンキュ。開けていいか?」

「どうぞどうぞ!」

「これ………なんで?」

「うん、あのね………」



私からのプレゼントは低反発安眠枕。
だってさ………



「だって志波っていっつも眠そうにボーっとしてるでしょ。授業中もよく寝てるって針谷が言ってたよ。夜眠れないのかなぁって思ったんだけど違う?」

「ああ………」

「やっぱり!私も時々眠れないときあるの。そういう時って、枕の高さとか首の位置とか気になって、それでかえって眠れなくなって、悪循環になるでしょ?だから枕がイイヤツなら眠れるかなぁって思ってそれにしてみました!」

「………よく分かったな、オレの欲しいもの」

「えへへ、大正解?」

「ああ。ありがとう。……大切にする」

「どういたしまして!」



喜んでもらえてよかった。
嬉しそうだからこっちも自然にニコニコしちゃう。
あんまりニコニコ見てたらフイッと視線を外された。
なに、それ?



「あ、そーだ!」

「………なんだ?」

「それで眠れるようになったか、今度教えてね?」

「あ?………ああ」

「効果あったら私もおんなじの買うから!」

「………もしかしてオレは実験台か?」

「違う違う。志波に安眠をお届けしたいのは私の素直〜な気持ち、コレホント」

「ハァ………」

「あ、嘘だと思ってる!ホントだからね!」

「………わかった」

「おんなじのにしたらお揃いだね〜!」

「っ………!!」

「なに?お揃いは嫌なの?」

「………どっちでも」



なに、それ?
ホント志波って口数少なくって本心がよく見えない。
素直に嬉しそうにしてたときは分かりやすかったのに。

まあ、やっと友達かもって思えるようになったわけだから、これからだよね、お互いに理解してくのは。
よろしく、友達。



「誕生日おめでとう!」

「サンキュ」











(あとがき)
1年目の秋、やっと「友達かも」と思えるようになった主人公さんです。
1年目のプレゼントは低反発安眠枕。こんなものを学校に持ってくのも大変だったと思うのですが・・・。
なんで枕なんか選んだのか考えてたらこんな理由かなぁって思いました。
あ、この話、実は本編とリンクしてる感じです。







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Photo:おしゃれ探偵