か・・・勝手に見ちゃダメ！

森林公園まで、走ったらギリギリか…………どうする。

「勝己ー！　あれ？　、まだ来ねぇのか？」
「元春……」

いつまでもオレを子供扱いして
お節介をやいてくる面倒なヤツ。
だけど、たぶん、本当は……いつでも頼りにしてたんだと思う。
オレにとっては、やっぱり、兄貴……みたいな存在。

「なんだ、勝己、どうした？　そんな顔して」
「元春……頼みがある」
「頼み？」
「何も聞かずに、オレを森林公園まで連れてってくれ」
「…………理由は、言えないんだな」
「ああ……」
「んー……」
「……」
「……」
「……」
「…………わーったよ」
「助かる……」
「で、何時までに行けばいいんだ」
「8時……」
「8時か。まあ車なら余裕だな。じゃじゃ、さっさと行くぞ、ほれ」

元春のおかげで時間より早めに森林公園に着いた。
広い駐車場には数台しか車が見えない。
こんな時間に来るヤツなんてほとんどいないに決まってる。

「オレはここで待ってるから、なんか知らんけど行ってこい」
「恩に着る」

とは言うものの広大な公園の何処に行けばいいのか見当もつかない。
とりあえず入口か……。
高校ん時、よく待ち合わせに使ってた場所。
この時間、街灯はついてるが薄暗くてひっそりとしている。
時折、落ち葉だけがカサコソと走っていくだけ。



PM8:00
時間きっかりに電話が鳴った。
『マニアッタヨウデスネ。ツギハトウダイニ9ジデス』
今度はそれだけ言ってすぐに電話が切れた。

こんなに人の気配が無いのに
どこからオレの事を監視してるんだ。
だが従うしかねぇ。
それしか今は方法が無い。

指示されたとおりの時間、
指示されたとおりの場所、
元春は何も聞かずに
オレを車で運んでくれた。

9時、灯台。
10時、はばたき山の展望台。
11時、防波堤。

いったい何の意味があるってんだ。
海、山、海、山と振り回されてるだけのような気がする。
きっちり１時間ごとに。
まるで学校の時間割だな。
犯人の手帳には時間と場所がキッチリ書かれてるに違いない。

手帳……か。
そういや、こないだの手帳を拾った時、
いつもより慌てて面白かった。





「み、見ちゃった？　中？」
「いや、見てねえ」
「ほんとに？　絶対？」
「ああ……あ、なんか挟まってた紙が見えちまったが……」
「え！？　うそ……」
「なんだありゃ？　なんかの暗号か？」
「う……そ、それは…………」

手帳を拾った時、
間に挟まってた紙が落ちて、
それを拾い上げる時に
何か書いてあるのが見えた。

L→W
20→M
ケ→H2

……後は覚えてねぇ。
意味わかんねぇし
聞こうととも思わねぇ。
も言いたくなさそうだ。

「別に言わなくていい」
「怒ってる？」
「……そんなんで怒るわけねぇだろ？」

フッと笑ってみせたら
安心したように手帳を胸に抱えてた。

きっと何か企んでるんだろう。
高校ん時からずっとアイツだけ見てきた。
バレバレなんだ。

特に今日のは明らかに挙動がおかしい。
大きな瞳がキョロキョロ動くとこや
手をパタパタさせてる仕草が
本当に小動物のようでカワイイ。

が、知らないふりをする。

事を成し遂げたあとの
満足そうなの顔を見てみたい。
きっと終わった後に
最初から最後まで
嬉しそうに話してくれるだろう。

クルクルと表情を変え
時折笑い声を交えながら
アイツが話をする。
それを聞くのがオレはいつも楽しみだった。





だから……早くをオレに返してくれ。

夜中の防波堤。
真っ暗で海は見えない。
波音だけがやけに大きく響く。

PM11:00
また時間きっかりに携帯が鳴った。





……to be continued

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（あとがき）
ハッピーバースデー！
志波くん、19歳のお誕生日おめでとう！

こんにちは。Say-coです。
勘のいい方にはそろそろばれていますでしょうか(笑)

お題とのこじつけもソロソロ限界か？　……すみません、すみません。
デイジーが「見ちゃダメー！」とか言って
「分かった。悪かった」とすぐに謝る、
そんな優しさ溢れた志波くんも大好きです。
意地悪する志波くんも好きだし、『オレに隠し事……』と悶々する志波くんも好き。
どんなんでも志波くんなら許せるというわけです。はい。すみません。

今回はメモを見ちゃったんですけど、
意味が分からないのでスルーするつもりだったんですよ、志波くん。
だけど、デイジーがあまりにも慌てるもんだから、
こいつ本当にカワイイ、とかでろーんってしてるんですよ。

早くデイジーさんに会わせてあげたくなってきました。
では！


志波勝己誕生祭09投稿作品
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