* 志波勝己誕生祭09からお越しのお客様へ *
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み・・・三日と離れられない
(いた……)
若王子先生の言ったとおり
は陸上部の部室にいた。
壁際の長椅子に座る姿を
この目で確認して
長い溜息を吐いた。
ドッキリだったと聞かされたが
やっぱり姿を見るまでは不安だった。
のことになると
ずいぶん情けない男になるらしい、オレは。
(よく寝てる。オレの気も知らずに…………)
真っ直ぐな姿勢のまま
スヤスヤと寝ているに
苦笑するしかない。
隣に腰掛け軽く肩を抱き寄せたら
自分から顔を摺り寄せてきた。
オレの鎖骨の辺りに。
たぶん、温かいところへと
無意識に寄ってきてるだけだ。
まるで猫、だな……。
喉元に温かい寝息がかかる。
顎を柔らかい髪がくすぐる。
その感触に少しだけ息が漏れちまった。
くすぐったがりはの専売特許なのに。
「……」
耳元に口を近づけて
声になってんだか分かんねぇような
息交じりの声で呼んだら
一瞬プルッと身体を奮わせた。
ほらな。
これだけでこそばゆいらしい。
下の名前で呼ぶのは、まだ慣れない。
時々、二人きりの……そういう時にだけ
ボソリと呼ぶようになった。
それだけでもは嬉しいみたいで
微笑みをオレに向けてくれる。
そうして潤んだ目で頬を赤らめながら
小さな声で「勝己」と啼く。
今はあんな表情も声も無いのが残念――
(――ん……? ああ、なるほどな)
どうやら、今日はオレを嵌める日らしい。
一体いくつサプライズを考えてんだか……。
「はぁ……もう我慢できねぇ。寝てるまんまでもいいか……」
わざとらしく言葉にした後、
頬から顎に指を滑らせクイッと上を向かせたら……
さっきほんのり色付いた顔が
一気に真っ赤に染まり
くりんと大きな目を見開いた。
「ちょ! ここじゃダメ!」
「…………クククッ」
ここじゃなきゃいいのか?
そこまで焦る必要あんのか?
どうせ誰もいねぇってのに。
だめだ。
笑いがおさまらねぇ。
「おはよ……クッ…ククッ……」
「うぅ……オハヨゴザイマスー……って、わあ!」
笑いながら思い切り抱き締めた。
……笑ってるのに泣きそうだ。
何も無くて良かった。
本当に良かった。
ほんのわずかだってのに
「会えなくなるかもしれない」
と不安の中で過ごしたあの数時間、
心臓が破裂しそうだった。
またこうして腕の中に抱くことが出来る。
こんなにも大切で
こんなにも愛しくて
想うだけで
苦しくなったり
嬉しくなったり
そんな存在、他には絶対に無い。
「オレの前からいきなり消えるな」
「う、うん?」
「どこにも行くな」
「よ、よくわからないけど……わかった。行かない。ちゃんと志波のそばにいる」
ほんとにわかってんのかどうだか。
けど、その気合の篭った返事に
おさまっていた笑いがまた復活してきた。
「志波……笑い過ぎだよ……あーあ、一勝一敗かぁ…………」
「……なにがだ?」
「志波の誕生日祝いのサープラーイズだよ。
『はね学で誕生日パーティ、
アーンド、
でもただのパーティじゃなくて
同窓会も一緒にして驚かせちゃえ計画〜』
は成功したでしょ?」
「あ? ああ、まあ……」
こいつの知らねぇドッキリもあったがな。
誕生日ずっと一緒にいるっつってたのが
まさか0時から始まるとは思ってもみなかったから
まあ、成功っちゃ成功に違いねぇ。
「で、一敗ってのは、なんだ?」
「さっきのだよ……」
「さっき……ってのは、寝たフリしてたやつか」
「うん」
「おまえ、なに企んでたんだ?」
「誕生日に普段言わないような事を言わせちゃおう第一弾……あとちょっとだったのに」
「第一弾? そのニ、その三もあんのか?」
「それは言えません。言ったらサプライズじゃなくなっちゃうもん」
「はぁ……で、何言わせようとしたんだ?」
「くすぐったい……って」
「……有り得ないな」
「えー? そんなことないよ。だってさっき反応したじゃん。それにまだ作戦の途中だったんだよ」
まあ、言われてみれば確かに。
首元にかかる息や、
ふわふわ触れる髪の毛は
それっぽい感触ではあったが……
だが、身体が反応しても「くすぐったい」とは言わないと思う。
まあ、どんな作戦だったかは興味ある。
「続き、やってもいいぞ」
「ほら」と顎をあげて首を見せてやったら
目をぱちくりさせて
耳まで真っ赤にしながらも
「では」と笑いながら顔を寄せてきた。
オレの顎の下にすっぽりとはまるの頭。
オレの身体は、仕様のサイズで作られてんじゃねぇか?
それぐらい自然におさまっている小さな身体。
その温もりはなんとも言えねぇほど心地いい。
(くすぐったいのは身体じゃなくて胸ん中だな……)
毎日この腕の中に抱いて眠れるようになるまで
あとどのくらい待てばいいんだ?
どこにいて何をしてんのかわからなくて
心配して不安で焦る、そんな経験はもうしたくない。
早く、一緒に――
「続き、行きます」
「おう………………!!」
何されんのかと思って一応身構えたら
首筋をペロリと一舐め、二舐め……
ほんとに……こいつは…………
「ククッ……クッ……ハハッ」
「あ! 笑った! ねえくすぐったかった? ねえねえ?」
「ああ……参った……ククッ」
「やった! わーいいいいぃ?」
喜んでるをぎゅうぎゅうと抱きしめた。
「早く、一緒に…………帰るぞ」
一緒に――
……その後に続く本当に言いたい事は、
今はまだ言えねぇけど
いつか必ず言う。
だから。
「覚悟しとけ……」
「え? な? え?」
「……返事は?」
「は、はい?」
その時まで手離すつもりはねぇからな。
もちろんそうなった後も、な。
「帰るぞ」
「あ、ダメだよ! せっかくみんなパーティに来てくれたんだから」
「……いや、あいつ等、同窓会したかっただけだろ」
「そんなことないもん。ちゃんと志波をお祝いするって言ってたもん」
「ふぅ……わかった。何時までやるんだ、あれは?」
「1時までの予定だよ」
「その後は?」
「志波のアパートに行って2時から8時まで仮眠、その後の計画はサプライズなので言えません」
「仮眠?」
その綿密な計画を崩したら怒られるのか?
だが、まずオレんちに来るって時点で仮眠はありえねぇだろ。
そういうとこ抜けてるな、相変わらず……。
「じゃ、さっさと終わらせるぞ、パーティーを」
「さっさと、って……ん、まあいっか。行こう!」
笑いながらが立ち上がり振り向く。
スッと伸ばされた両手が
オレの頬をあっという間に包み込む。
の唇がオレのそれに重なって
「ハッピーバースデー、勝己」
耳元で鈴が転がるような声が響く。
その感触と両手が離れていくまで
オレは驚きで放心していた。
こういう突拍子も無い行動を
毎日浴びるのだとしたら
別の意味でオレの心臓は破けるかもしれない。
オレの方が覚悟しとかなきゃならねぇのか?
その日が来るまでに……。
fin.
(あとがき)
ハッピーバースデー!
志波くん、19歳のお誕生日おめでとう!
こんにちは。Say-coです。
お題は「三日」でしたが、三日どころか一分一秒も離れられないそうですよ、拙宅の志波は。
たぶん、この後のパーティー兼同窓会でもベタベタくっついているんです。
で、「志波って硬派なイメージだったのによぉ……」とか久し振りに会った友人に言われてるんです。
あとデイジーはドッキリを知らないので「ちょ、志波、くっつきすぎ! なんでー??????」とか思ってるんです。
それを企画リーダーの若ちゃん、
20日のサポート担当真咲先輩、
ケーキとケータリング担当のはるひとハリーが
ニヤニヤしながら生温かく見守っているわけです。
(↑これが「勝手に見ちゃだめ」のメモの正解。メモを書いたのは若ちゃん)
この後二人はどんな誕生日を過ごすのか、
色々と想像してみてください〜。
ま、とりあえず、仮眠6時間ってのは
まず有り得ないでしょう(笑)
最後までお付き合いいただき
本当に本当にありがとうございました。
志波勝己誕生祭09投稿作品
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