[omake.思い出の] |
(思い出の居酒屋ルートが選ばれました) 「生中二つ!」 「懐かしいですねえ、このお店。歓迎会以来ですか………」 遠い目をする若王子先生。 そんな昔じゃないのに、おかしな人。 だけどそんなとこも全部好きだなあ。 はあ、私相当メロメロだ。 「迷惑じゃない」って言ってくれたけど、 「好き」って言われたわけじゃないんだよね。 怒らせたこと許してくれたし、 またこれから仲良くなれば良いんだけど 私は急激に欲張りになってしまっていて 物足りないな〜って考えちゃうの。 「好き」って告げたからには何か返して欲しい。 そして出来れば返ってくるものは嬉しいものがいい。 「時任先生?」 「はい?」 「どうしても聞いてみたかった事があるんです」 「なんでしょうか?」 「歓迎会の時、僕はどうやって帰ったんでしょう?」 ああ、それで遠い目してたの。 あの時は若王子先生途中で寝ちゃって大変だったなぁ。 でもあれはあれで私にとっては秘密の思い出なのよねぇ……… 「あの時のこと、知りたいですか?」 「時任先生は何か知ってるの?」 「まあ………」 「生中二つお待たせしましたー!」 「とりあえず乾杯しましょ!お誕生日おめでとうございまーす!かんぱーい!」 「ありがとうございます」 ゴキュゴキュゴキュ 「はあ〜美味しいですねぇ!すいませーん!おかわりお願いしまーす!」 若王子先生が目をまん丸にして私の様子を見ている。 歓迎会の時とおんなじ。 だって美味しいんだからしょうがないんだもん。 「若王子先生も誕生日なんだからドンドン飲みましょ!」 「はいはい………」 「そうそう、歓迎会の日のこと、後で教えてあげますね」 「今じゃダメなんですか?」 「ダメです」 「はあ、なんだか分かりませんが、分かりました」 ビールの後は日本酒飲もうっと。 あ、でも、今日は若王子先生が主役なんだから 飲みすぎない方がいいかなぁ………? んー、でも、美味しくって止まらな〜い! 結局歓迎会の時と同じようなペースで飲んで 若王子先生にも同じようにすすめて……… 「また潰しちゃった………どうしよう」 またまた寝てしまった若王子先生。 「仕方ない。また送っていくかぁ!」 そう、歓迎会の時も送って行ったのは私。 若王子先生、記憶が無かったみたいだけど 無理やり起こしたらヨロヨロしながらも 歩いたんだよね。 だから、今日も。 「若王子先生、せんせ〜い、帰りますよ〜」 「んー………はぁい………」 お店の外でタクシーを拾って 先生のアパートまで移動する。 「ほら、せんせい、アパート着きましたよ。降りますよ」 「………はぁ…」 ヨロヨロ歩く先生を部屋の前まで支えて 「先生、鍵、鍵出してくださ〜い」 「んー………」 チャラ それを受け取って鍵を開けドアを開け部屋に入る。 「お布団敷くからちょっと待っててくださいね」 「んー………」 部屋の隅の所に座らせてみたら 小さく体育座りになって 膝の上にあごを乗せておとなしく待っている先生。 う………カワイイ。 「さ、どうぞ、寝てください」 「ん………」 体育座りしていた場所から ノロノロと移動してきて 布団の上にポスンと倒れた先生。 うつぶせに倒れて スースー寝息をたてている。 ニャー ニャー 「あ、サクラモチ、ヤキブタ、今日も美人さんとハンサムさんだね」 擦り寄ってくる二匹の猫。 若王子先生の言動が猫っぽいのは 猫と生活してるからなんだろうなぁってよく感じる。 「今、ご飯あげるね」 さて、と。 布団の上で転がっている大きな猫さん。 さっきはうつ伏せで倒れていたのに 今は横向きに丸まって寝ている。 ………カワイイ。 歓迎会の時はそこまでメロメロじゃなかったけど やっぱり布団の上で小さく丸まって寝ている姿が可愛くて……… チュッ あの時と同じ。 またキスしちゃった。 ここまでは歓迎会の日と全く同じ。 本当に同じで思わずクスクス笑っちゃう。 あの時はこれで帰ったんだよね。 でも今日はもうチョットだけここにいたい。 キスするぐらいなら 寝込みを襲うって言わないよね、って 自分に言い聞かせてみたりして。 キス。 若王子先生の唇は 少しひんやりしていて 私の熱を吸い取ってくれるみたいで 気持ち良い。 キス。 本日3回目のキスから離れようとしたその時 いきなり若王子先生がガバッと抱きついてきて キスしたまま先生の上に倒れこんでしまった。 「んんんんんーーーー!!!」 抗議して やっと離してくれたから 起き上がって若王子先生を見れば しっかり目を覚まして ニコニコ笑いながら私を見ていた。 手だけつないだまま。 「わ、若王子先生?起きてたんですか?いつから?」 「最初からです」 「は?」 「だから、最初からずーっと起きていました」 「え?だって?居酒屋で………」 「お芝居です」 「だって、酔って、潰れて………」 「歓迎会で潰れた時より今日は飲む量を少なくしました」 「えー!計算しながら飲んでたんですか?」 「そうです」 ず、ずるい! 自分のしたことがめちゃめちゃ恥ずかしい。 わーん! 「歓迎会の時は、何回キスしてくれたんですか?」 「教えませんっ」 「後で教えてくれる、って約束しました」 「あ………そうだった。うー………1回です」 「そうだったんだ。覚えてなくて残念」 「いいです!忘れてください!今日のことも!」 「どうして?」 「だって恥ずかしいです。私からした、なんて………」 「じゃあ、僕からなら良い?」 「だ、ダメです」 「どうして?」 「だって若王子先生の気持ち、まだ聞いてません」 そうだよ。 私は先生のこと「好き」だからいいけど 若王子先生はどうなのよ? 「好きです。これでいいですか?」 「え?えっと、聞かれても………」 「好きです」 「あの」 「好きだ。好きだ。好きだ」 何回も「好き」って言葉を繰りかえされて 引っ張られて 倒れこんで キスの嵐。 私の秘密の思い出は 二人の秘密の思い出になった。 かなりバージョンアップした形で……… 「君が飲んだお酒はどこへ行くの?」 「さあ?」 「水分はきっと、涙と汗と口の中とそれから下の………モガモガ!」 「ヘンなこと言わない!それ以上言ったら口塞ぐだけじゃなくて首絞めますよ!」 「モガモガモガモガ!」 「本当に言いませんか?」 「モガ!………はぁ、苦しかったですぅ………」 「若王子先生がエッチだからいけないんです!」 「大人はみんなエッチなんです」 「私は大人だけどそんなにエッチじゃありません」 「寝込みを襲ったのは君じゃないですか」 「別に襲ったわけじゃありません!」 「襲われた。だから責任取ってくださいね」 「せ、責任って………それ男がとるもんでしょう、普通?」 「そうなんですか?ふむ………じゃ、僕が取ります、責任」 「はい?」 「だから今度は僕が襲います」 「えええ?!わ、わーーー」 (終) |
1〜5まで読み終わって 中途半端だなぁ って思ったそこのあなた。 これで少しは満足していただけましたかー?! メニューに戻るにはウィンドウを閉じてくださいね。 |