冬の海はあったか



「ま、ま、真咲先輩っっっ!!!」

「おー!なんだー?!」

「さささ寒いですぅーーーー!!!」



おお、そりゃそうだ。
なんってったって、海だしな。
しかも真冬のな。

それに今日は風が強い。
うん。
絶好のデート日和だ!



「はははー!冬の海もいいもんだろー?!」

「うー………そ、そう、ですかぁ?」

「おまえ、そんなに寒がりだったか?」

「いえ、でも、これはもう寒がりとかそういう問題じゃないような………ひゃー!」



風でめちゃくちゃになってる髪を押さえながら『もう帰りたい』と涙目で訴えてくる顔。
本気のむくれモードになる前に、オレはコイツの背後にピタッと立った。



「先輩………何してるんですか?」

「風除けだ。どーだ?風来なくなっただろ?」

「あ!確かに!……うー、でも、まだ寒いです。」



目の前のオマエが振り向きながらオレを見上げてくる。
冷たい風がしみて瞳は潤んでる。
頬は赤く染まってる。
(赤いのは頬だけじゃなく鼻もだけどな。)
だが、その顔にグッときちまった。



「じゃ、これでどーだ?」

「え?!わーーっ!!」



オレは自分のコートの前を開けて、その中にアイツを閉じ込めた。
後ろからコートごと抱きしめて、頭の上に自分の顎を乗せて。

ははは。
固まってる、固まってる。
素直に照れるコイツはホント可愛い。
こんなナイスな体勢で海を眺められるんだから、冬の海だっていいもんだろ、と思うわけだ。



「な?あったかいだろ?」

「あの………はい………。」

「うん、オレもあったかい。良い考えだろー?」



うん。
くっついてるからあったかいってのもあるけど、コイツと一緒だと、ホント、胸の中もあったくなる。
なんて言うか、ほっこりほかほか、だな。
あー、オレ、シアワセ。



「あの、でも、先輩?」

「ん?どーした?」

「顔が寒いから反対向いて良いですか?」

「は?」

「だからぁ………んしょっと。」



ビックリして腕の力が緩んだすきにクルッと体を反転させてコッチ向いたコイツ。
で、コートの下で抱きついてきて細い腕が背中にまわされて……。



「あ………」



……今度はオレの方が固まっちまった。



オレの胸の辺りでクスクスと笑う。
そのたびに顎の下で髪が揺れる感触。
「あったかい」と言いながらオレの胸に頬をスリスリする。
背中にまわされた手がオレの服をギュッと掴む。
それだけでも沸騰しそうなのに



「先輩もあったかい?」



なんて真下から小首を傾けながら見上げられたら………



………まいりました。



訂正。
コイツといるとあったかいと言うのは嘘じゃないが、頭も心も体も熱くなると言った方が正解かもしれない。
シアワセ通り越して、色々と、ヤバイ。



「すげーあったかい、です。」



と返事して、ギュッと抱きしめ返すだけで精一杯のオレでした。











(あとがき)
冬の海デート、真咲先輩バージョン!
先輩は寒いところに連れ出して手つないだり腕組んだりしちゃおうと考えてるんじゃないかと。
でもきっとデイジーに逆にやられちゃうんじゃないかと。
ね?
(誰に聞いてるんでしょうね)

ほっこり月間(と勝手に定義)のトップを飾るのは真咲先輩でした。
1月は先輩の誕生日だからね。
企画としてやれるか分からないけれど(弱気)、
真咲先輩比率を高くしていこうと(勝手に)思っています。


(2009.1.5)

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Photo : おしゃれ探偵