『おやすみ』




ピッ

『もしもし、勝己?』
『ああ…どうした?』
『眠れない…』
『は?』

『明日試合なのに…緊張して眠れない』
『で、オレに電話か、こんな時間に』
『もしかして、もう寝てた?』
『ああ』

『ごめん、もう切る、おやすみ』
『あ、待て!切るな』
『だって』
『眠れねぇんだろ?仕方ないから眠くなるまで付き合ってやる』
『でも、いいよ。勝己も明日練習あるんでしょ?』
『いいから』
『…ありがと』

『で、オレはどうすればいいんだ?』
『えー?どうするっていわれても…』

『ふーっ…羊でも数えるか?羊が1匹、羊が−−−』
『それ、さっき自分でやった』

『桃太郎でも聞かせるか?むかーしむかし−−−』
『幼稚園児じゃあるまいし…』

『子守唄でも歌うか?あ、あー♪』
『赤ちゃんじゃないし。ってか、何それ、発声練習?』

『…どうしろって言うんだ?』
『だって…』
『ハァ………』
『あ、でも』
『ん?』
『話してたら緊張は落ち着いてきたみたい』
『そうか?』
『うん』

『話だけで落ち着くってんなら、顔でも見せに行くか?』
『え?』
『自転車なら10分で行けるぞ』
『えええ?』

『ククッ………』
『あー!からかったの?!』

『…』
『…』
『行くか?』
『…』

『おまえが不安な時は、いつだって…』
『…』
『…』
『…』

『なんとか言え』
『…ん』
『…』
『来て欲しい…けど』
『けど?』

『その…』
『?』
『会ったら、別の意味で寝れないっていうか…』
『は?』

『だだだだって、
 勝己と会った後は
 いつもドキドキしちゃって。
 その、色々、思い出すと…』
『ドキドキって…おまえ……』

『あああ!色々思い出しちゃったじゃん!』
『…そんな寝れなくなるような事したか?』
『手つないだり、とか、腕組んだり、とか、色々』
『…それぐらいで寝れねぇようじゃ…』
『なに?』
『この先が思いやられる』
『こ、こ、この先って???』

『……クッ』
『あーー!またからかった!!』
『ククッ、落ち着いたか?』
『えー、まあ、緊張はほぐれた』
『なら、よかったな』
『うー、まあ』

『今までちゃんと練習してきたんだ』
『うん?』
『その通りにやるだけだろ?』
『うん』
『なら大丈夫だ』
『ん』

『眠れそうか?』
『たぶん』
『そうか』
『ありがと、勝己』
『ああ』

『おやすみ』
『ああ、おやすみ』
『…』
『…』

『勝己、切ってよ』
『おまえが切れ』
『…』
『…』

『試合終わったら会いに行っていい?』
『待ってる』
『ん』

『じゃあな』
『じゃ』
『…』
『…』

『フゥ…切るぞ、ちゃんと寝ろよ?』
『ん、おやすみ』
『おやすみ』

ピッ


羊関連のCDを聞いて無性に書きたくなってしまいました。
大学生位の志波君と主人公ちゃんという感じですね。
出来れば二人ともアパートかなんかで一人暮らししてて欲しいです。
(2008.7.30 拍手掲載)



目次へ戻る