「はるひ〜〜〜………」 「急に押しかけてきてどないした?」 「私と志波、もうダメかもしれない………」 「はあ?昨日は学校でラブラブだったやん?」 「学校でラブラブなんてしないよ」 「なにゆーてんの? 体育であんた転んだ時、 志波やんダーッときてサーッと保健室連れてったやろ?」 「うん」 「それがラブラブやっちゅーねん」 「そうなの?」 「ま、そんなことより、なんでダメなん?」 「それが………」
昨日の土曜日、 私はいつものように志波をデートに誘った。 「日曜日、森林公園へ行こうよ。 いつもみたいにお弁当作ってくね。 なんかリクエストある? おにぎり?サンドイッチ?」 「悪い。明日は無理だ。予定があるんだ」 「え?あ………それなら、しかたない、ね」 「また、べつの機会に誘ってくれ」 「うん、そうだね、また誘う!」 なるべく「なんでもない」って感じで明るく答えた。 でも頭の中ではガビーンっていう効果音が鳴ってた。 当然OKだと思っていたのと 志波がなにか隠してるみたいに 目を合わせてくれなかったことが すごくすごーくショックで………。
「部活でもないのに断られちゃったんだよ………。 断られるの初めてだし……… だからもうダメなんだよ、きっと」 「断られるのが初めて?!」 「うん」 「それがおかしいやろ? 志波やんだって用事ぐらいあると思うで?」 「でも……… いつもは用事より私を優先してくれてたもん」 「あー、まあなぁ、 志波やんはそういうやっちゃな………」 「でしょー! ………だからもう私が一番じゃないってことでしょ」 「んー、でも志波やんがねぇ………。 あんたのことベタぼれだったやん」 「それにね、今日、見ちゃったの。 志波が女の人といるところ。 予定ってそれだったんだよ、きっと」 「ええっ?!それほんまなん?」
今日は、暇になっちゃったから ショッピングモールに行った私。 「どんなのが志波の好みかな〜?」 なんて考えながら洋服を選ぶ。 少しでもカワイイって思ってほしいから。 そんな感じで色んなお店のウィンドウを覗きつつ パティオを見下ろす2階の廊下を歩いていた。 「あ!………うわーん!!!」 下から子供の泣き声が聞こえて パティオの方を振り向いてみたら 赤い風船がフワッと飛んでいってしまうところだった。 風船がショッピングモールの屋根に隠れて 見えなくなるのを見届けて視線をおろした時、 吹き抜けを挟んで反対側の廊下に志波がいたんだ。 知らない女の人と一緒に。 その女の人は志波の肩に手をかけていた。 志波もちょうど視線をおろしたところだったのか 多分目が合ったっぽい。 ビックリしたような目。 まさかこんなところで私に見られると 思ってなかったんだろうな。 私はそれ以上そこにいられなくなって 走って 逃げて そしてはるひの家に転がり込んだ。
「なるほど……… それであんたの携帯さっきから鳴りっぱなしなわけやな」 「電源切るのもわざとらしいかと思って………」 「ずーっと出ないっちゅうのも変に思われるで?」 「ううーーー、どうしよう、はるひ〜〜〜〜!」 「出ればええやん」 「だって『別れたい』って言われちゃうんだよ、きっと」 「いやぁ………ないと思うんやけどなぁ………」 「はるひ、出てよ〜〜〜」 「ええっ!うちが?!」 「お願い!」 「しかたない、貸してみ……… うわっ、メールも着信も半端じゃなく来てるよ…… わ、また鳴った!!」
シーン……… はるひに電話出てもらった3分後、 志波がはるひの家にやってきた。 なんか私がいるところ予測されてる? 腕組んで正面に座ってる志波の顔が怖い……… 出されたお茶を一気飲みして睨むから はるひもひきつっちゃってるよ。 「なんで電話に出ない」 「だって………」 「メールも見てねぇのか?」 「だって………」 「だって、なんだ」 「………そんなに怒らなくたっていいじゃん!」 「怒ってねぇ」 「怒ってるじゃん!悪いのは志波なのに!」 そうだよ! 私悪くないもん! 怒られることしてないもん! 「オレが悪い?なんでだ?」 「予定があるって言って女の人と会ってた!」 「はぁ?」 「見たんだから!ショッピングモールで!」 「あん時の事言ってるのか? ありゃ天地の姉さんだそうだ。 後に天地もいたが見えなかったのか?」 「え?天地の?お姉さん???」 「あそこで天地に偶然会っただけだ」 「え?」 あれ? あ、そうだったんだ。 はは、よ、よかった。 あ、でも……… 「じゃ、予定ってなんだったの?」 「それは………」 「志波が一人でショッピングモール行くって変だもん」 「………」 「いつも商店街とかでしょ、買い物行くの」 「………」 「やっぱり言えないようなことなんだ………」 「違う!」 「じゃ、教えてよ」 「っ………」 「………」 「………」 今度は私が睨む番だもん。 私には志波に言えないような予定なんてないもん。 でも、そこまで干渉したらダメなのかな。 志波には志波自身に必要な事があって そこに私は居ちゃいけない時もあるのかな。 「志波やん、どうしても言えないようなことなん?」 「………」 「でも、この子のこと嫌いになったとか そうゆうんやないんやろ?」 「っ!当たり前だ………」 「ほら、ね、大丈夫やん。 志波やんには志波やんの予定があったんやろうし、 今日はこれくらいで勘弁してやり?」 「ん………」 だよね。 そうだよね。 なんかすごく寂しいけど プライバシーって どんなに近い存在になっても あるもんなんだ。 踏み込んじゃいけない所があるなんて、 知らなかった………。 「………っ!」 「あんた、どないしたん、泣かんといて!」 「う……はる……ひーーーっく………」
「ウィーッス!」 「あ、ハリー!やっと来てくれた。待ってたんよ」 「なんだなんだ、湿っぽいなぁ! おい、志波、言っちゃえばいいだろ?」 「ああ………」 「なになに?ハリーなんか知ってるの?」 「オレ様から言っていいのか?」 「いや………オレが言う」 志波はそう言って私の横に来て フワッと抱きしめてくれた。 針谷とはるひの「オーッ!」って声が聞こえた。 「泣かないでくれ」 「う………」 「頼む」 「……っく」 優しく頭をなでてくれるのは 気持ちいいんだけど 涙が止まらない。 「……これを買いに行ってたんだ」 少しだけ体を離して ポケットから取り出して 見せてくれたのは小さな箱。 「これ?」 「もうすぐ誕生日だろ、おまえの」 「あ………」 「針谷にアクセサリーの店教えてもらったんだ」 「そうだったの………」 「こんなの買いに行くようなガラじゃねぇけど、 おまえが喜ぶなら………」 「ん………」 「当日まで内緒にするつもりだったのにな」 「ん………」 「ちょっと早いけど誕生日おめでとう」 小さな箱。 大好きな人からもらえるとすごく嬉しいもの。 しかも誕生日に。 こんなの一人で買いに行くなんて ホント、志波のガラじゃない。 そこまで私の事考えてくれてたんだ。
でも 私はそれをそっと押し返した。 「………受け取ってもらえないのか?」 「見なかったことにする」 「そうか………」 志波、落ち込んだ? ごめんね。 これはちょっとした仕返し。 昨日から今日にかけて私がオロオロした分の。 「ふふ………」 「なにがおかしい?」 「誕生日、楽しみにしてるね!」 「は?」 「今日、私は、 なにも聞かなかったし なにも見ませんでした」 「あ………」 「志波がなにか内緒にしてるらしいけど、 私は気が付きませんでした」 「おまえ………」 「あー、 誕生日に大好きな人からなにをもらえるのかなぁ、 楽しみだなぁ!」 「ククッ………ああ、楽しみにしてろ」 「うん、楽しみにしてる!」 そう言って私から抱きついたら 志波はちょっとだけ硬直したけど すぐにたくましい腕で抱きしめ返してくれた。 ああ、幸せ………。
「えーっ、ゴホゴホ」 「ウォッホン」 「あ………!はるひ!」 「針谷………」 そうだったここはるひの部屋だった。 しかも針谷もいたんだっけ。 「結局、あんたの早とちりやったんか………」 「ハ〜〜〜ッ、 こんなことでオレ様を呼び出して、 こき使ってやるからな!」 「あはは、ごめんね、はるひ、針谷」 「とりあえずコンビニでジュースと菓子を買ってこい!」 「ええっ!私が?!」 「がんばれ………」 「ええっ?!志波も一緒に行こうよ!」 「おまえが早とちりしたんだろ?」 「ええ〜〜〜〜っ!!!」 「ククッ……冗談、ほら、行くぞ」
(あとがき) 大海の雫様、12345Hitありがとうございました。 リクエストにうまく答えられているのか自信ありません…。 ・本人逹はいたって真剣 ・端から見たらただのバカッポーな志波&デイジ ・とにかくおバカでハッピーな二人 スミマセン、本当に、スミマセン。 うわーん、せっかくリクエストしていただいたのに こんな話しか出来なくて本当にスミマセンでした! これに懲りず、また来てくださいね。 ありがとうございました。 (2008.10.14)