ピッピッピッ ピッ トゥルルル トゥルルル カチャ 電話 『………志波です』 電話をかけた時の最初の声。 「もしもし」も「はい」も言わないでいきなり名前。 いつも同じって分かってるのにドキッとする。 鼓膜を揺すぶるような低い声。 もしかして怒ってる? それとも眠い? 電話、迷惑だったのかな? いつも同じ事で悩む。 そんな事を考えて 自分が名乗るまでに妙な間が空いてしまう。 いけない、いけない。 『あ、澤木、です』 迷惑だったらそう言ってね。 私は志波の声が聞きたくて 毎日だって電話したいと思ってるんだから。 志波は私に電話したいって思ってくれないのかな? 携帯が鳴って 名前を見て 通話ボタンを押すまで……… オレはいつも固まる。 それは一瞬なんだろうが 携帯のディスプレイを見たまま 本当に固まっているんだ。 だからボタンを押した後は 言葉を搾り出すのに必死。 『………志波です』 それだけで精一杯。 自分でもぶっきらぼうだと思う。 きっとアイツもビックリするんだろうな、 そんな言い方されて。 アイツが名乗るまでの微妙な間。 その間があるたび、 オレは「またやっちまった」と思う。 『あ、澤木、です』 耳をくすぐるようなオマエの声。 その声が聞こえると安心できる。 本当は毎日聞きたい。 今度はオレからも電話してみるかな。 拍手ありがとうございました。 初めて志波くんに電話したとき 「ええっ?!怒ってるぅ?!」って思ったのは私だけ? (2008.10.05拍手掲載) 目次へ戻る |