きっかけは昔話
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駅前で弟分の幼馴染、勝己と喋ってたら偶然アイツに会った。 花屋で一緒にバイトしてる3コ下の後輩。 オレは大学生。 アイツは羽ヶ崎学園に通ってる高校生だ。 出会った当初は中学出たばかりで、まだまだ子供で、目を離せねぇ妹みたいなヤツだった。 けど、それからたった半年ぐらいしか経ってねぇのに、アイツは変わった。 いや、オレが変わったのかもしんねぇな。 目が離せねぇのは前と変わんないんだが、違う意味で、だ。 最近のアイツは、花屋の仕事も様になってきて、お客さんの評判もよくて、やけにまぶしい。 なんて言ったらいいか、そうだな、アイツの周りには春の花が似合う。 そんな温かさを感じるんだ。 驚いたことにアイツは勝己と知り合いだって言うじゃねぇか。 まあ、同じ高校にいるわけだから当然と言えば当然なんだろうが、どっちからも名前が出たこと無かったから意外だったんだよなぁ。 「勝己、アイツと友達だったんだなー。」 「ああ………。」 「同じクラスなのか?」 「いや………。」 「へぇ〜。」 「……なにニヤニヤしてる?」 「いや、クラス違う子と仲良しだなんて勝己クンもなかなかやるねぇって思ってさ。」 「勝己クンって言うな。」 「へいへい。」 「……アイツが勝手に話しかけてくるだけだ。」 「へぇ〜、そうか。じゃ、オレ誘っても大丈夫だな。」 「……なんのことだ?」 「デート!アイツを誘う。今決めた。」 「っ……。勝手にしろ。オレには関係ねぇ。」 「関係ない、って顔してねぇみたいだけどな。」 「……うるさい。」 「分かったから、そんな目で睨むなよ。さ、アナスタシアで勝負勝負!」 勝己のヤツ、口ではあんなこと言ってるけど、目がこえーぞ? もしかして、まだ無自覚か? それなら話は早い。 先手必勝。 勝己が自覚する前に手を打つ。 何しろオレは会える時間が少ない。 同級生に比べたらどうしたって不利だろ。 それならアドバンテージとれるような事を考えねぇとな。 まずは来週の日曜日の予定を聞くか。 『真咲せんぱーい!』 オレを呼ぶ声と姿を想像して口許が緩む。 あ、いや、だけど断られたら………? ……おっとネガティブ、ダメ。 日曜はその後だってある。 ガンバレ、オレ! 駅前をふらついてたら、お節介な幼馴染につかまっちまった。 いつものごとく、お節介な事を言ってきたので、適当に返事してとっとと帰ろうと思ってた。 そしたら偶然アイツに話しかけられた。 はね学の同級生。 廊下で生徒手帳を拾ってやったら名前を聞かれ、その勢いに負けて思わず名乗っちまった。 それ以来、アイツはオレを見つけると、遠くからでも手をブンブンふってくる。 近いところにいれば「志波くん!」と名前を呼んで走りよってくる。 オレの方には特に話すこともない。 挨拶程度しか交わさないのに律儀なヤツだと、最初はそう思ってた。 日曜日に何度か誘われて、オレも暇だったから付き合った。 クルクル変わる表情と、話題豊富でよく動く口許と、突拍子もない行動。 そんなアイツを見てるだけでオレはおもしろいが、アイツはオレといて楽しいんだろうか? 友達が多いアイツのことだから、オレみたいに暇だからってわけでもなさそうだ。 だったら、何故オレを誘うんだ? 最近はそんなことを思ってる。 そんなアイツが元春と知り合いだと言った。 アイツのバイト先が花屋だというのは聞いたことあったが、元春と同じ店だとは知らなかった。 どうやら元春はアイツのことを気に入ってるらしい。 デートに誘うと言って張り切ってやがる。 「勝手にしろ。オレには関係ねぇ。」 学校で話すときだって最初に話しかけてくるのはアイツから。 どっか出かけるときも誘ってくるのはアイツから。 アイツはきっと周りの友達全てに同じように接しているはずだ。 オレもその中の一人に過ぎない。 アイツから何も言ってこなくなれば、アイツに出会う前に戻るだけだ。 元々高校でダチを作ろうとは思ってなかった。 だからそれでいい。 オレからは何もしない、それでいい。 「おーい、勝己ー???」 「………あ?」 「どこまで行く気だ?着いたぞ?」 「あ、ああ……。」 「大丈夫かぁ?熱でもあんじゃねぇか?」 「やめろ。触るな。熱なんかない。」 「そうかー?おまえ、昔っから具合悪くても我慢して言わないからな。あんまり意固地になんなよ?」 「余計なお世話だ……。」 我慢? 意固地? 何が言いたいのかさっぱり分からねぇ。 『志波くん?』 ……なんでアイツの声を思い出す? 今、このタイミングで……。 なんだってんだ、一体。 なんでこんなにイラつくんだ? くそっ………。 (あとがき) なぎ様、18700Hitリクエスト企画に投稿いただき、ありがとうございました。 リクエストにおこたえして、志波真咲対決です。 対決以前に、志波くんが自覚前となってしまいましたが・・・。 でも二人ともこれがキッカケでぐんとときめき度がアップするに違いない。 目次へ戻る Photo : おしゃれ探偵 様 |