GS1:和馬×さくら Butterfly Cafe 5周年フリーで頂いてきました。 「年越し蕎麦、食ったか?」 電話から聞こえる低い、優しい響き。 好きな人の声。 私は笑って「うん」と返事をする。 今、アメリカは何時なんだろう?と考えながら。 大好きな人はアメリカ。 私は日本。 5年も遠距離恋愛の私達を繋ぐのは目に見えない電波。 でも。 声だけは耳元に聞こえる。 遠くて、近い距離。 鐘の音 「紅白、見たか?」 「見てないよ」 「んじゃ、何してた?」 「お風呂入ってから・・お母さんの御節作りを手伝って・・・お蕎麦作ってたの」 「フーン・・・お前が?」 「あ、バカにして!」 拗ねた口調で答えると、彼の笑い声。 それだけで嬉しい。 「ちゃんとダシから作ったんだから!」 「ほー」 「天ぷらだって掻き揚げじゃなくって、ちゃんと海老天なんだから!」 「へー・・・上手そうだな。俺も食いたい」 「今、家に来たら食べさせてあげる」 フフンと。彼には見えないけど、腰に手を当てて笑う。 そして・・・少し切なくなった。 本当に。 今来たら食べさせてあげるのにな。 今日のは上手く出来たから。 ・・・・・・・会いたいよ。 「言ったな」 「ええ、言いました」 笑って言うと、彼も負けじとハハと笑う。 「じゃ、行くから。用意しとけ」 「あはは!じゃー・・窓開けとくから。飛んできて」 「窓かよ、泥棒みたいじゃねぇか。ちゃんと玄関あけろ」 「あはは。いいよ」 「・・・・この間のプロポーズ。OKだったよな?」 「・・・・・・・え?」 いきなり聞かれて。 え? と思う前に、インターフォンのベルが鳴る音。 「・・・・・・・・・・・・・・え?」 「来たぞ。蕎麦食わせろ」 「・・・・・・え?・・・・・・・・・・・」 「・・・と、その前にお前の親に挨拶すっから。さっさと降りてこい」 「・・・・・・・・・」 ・・・・・・・・・。 貴方はアメリカでしょ? なんの冗談・・・・・ ・・・・・・・・・ そっか、姫条君ね? 嫌なジョーダン!! 怒って口を開きかけた時、下から「さくら!さくら!!」と叫ぶお母さんの声。 気がつくと電話は切れていて。 私は携帯を握り締めたまま、部屋を飛び出る。 出た途端、父と母が挨拶する声が聞こえて。 私は足が止まる。 「今日は、挨拶に来ました」 さっきまで電話から聞こえていた低い、優しい響き・・・。 まさか。 まさか! 私は呆然として、ゆっくりと階段を降りる。 見える両親の足、弟の足・・・そして彼の足・・・。 あ、ネクタイしてる・・・。 バカみたいに。 そんなところが目についた。 頭を下げている彼の髪が目に入って。 次に、彼はゆっくりと頭を上げた後、ピンと背を伸ばした。 「さくらさんと、結婚させてください」 足が止まった私に。 彼はゆっくりと視線を向ける。 目が合うと。 彼は今まで見たこともないような、優しい顔をしていて。 私はボロボロと涙がこぼれた。 耳には、遠くで聞こえる除夜の鐘が聞こえた。 END |