16-17.大晦日の兄弟<志波Side>




はね学のクリスマスパーティーだったあの日、あの場所で、夢を見た。
中学のときの仲間と笑顔で一緒に野球した。
温かい春のような日差しの中で…。

そんな夢は本当に久し振りだった。
左肩に心地よい温かさと
わずかな重みを感じて目を覚ましたら
アイツがオレに寄りかかって眠っていた。







「おー勝己ー」

「元春…、勝手に人の部屋に入るな」

「オレはK1が見たい。
 リビングは親父達が紅白見ててダメ。
 それならこの部屋しか無いだろー?」

「ふー…」



大晦日だというのに人の部屋に勝手に入ってくる厄介者、真咲元春。
なんでこんなヤツと幼なじみなんだ、オレは?
ずうずうしくて、おせっかいで、うるさくて……



「ところで勝己、この可愛い子、誰だー?」

「…っ!俺の携帯を勝手に見るなっ!返せ!」

「おっと!
 良いよなー、クリスマスパーティー。懐かしいなぁ!
 勝己クンも青春かー」

「勝己クンって呼ぶな!返せっ、元春!」

「おーっと!で、これ誰だー?彼女か?」

「…ち、違う!お前、もう老眼なんじゃないか?」

「へ?」

「…、だ」

「え??」

「…」

「昼間会った時と雰囲気が違うぞ?」

「会った?」

「ああ、パーティー行く前、アンネリーにプレゼント持って来てくれた。
 それがなんだと思う?子供っぽくてなあ!
 お菓子たっぷりサンタブーツ!」

「…悪かったな…子供っぽくて…」

「ん?なんか言ったかあ?
 それにしても、これ本当にそうなのか?」

「嘘ついてどうなる…」

「んー、あ、そういえば服がこれだったか…」

「…!お前も見たのかっ?!」

「…?ああ、服か?こう、コートの前を開けて、前だけ…ってなんか勝己赤いぞ?」

「なんでもない、気にするな…」

「気にするなって言われても…?
 あー!
 もしかして勝己『も』見たのか?!」

「み、見てない、自分からは、………見えただけだ」

「はは…」

「ふー…」

「見た…オレも…」

「見たのか…」

「…」

「…」

「はは…、なんか暑いなあ。
 久し振りに二年参りでも行くか」

「湯冷めするから行かない」

「まあまあ、神様にお願いしとけば
 また良いこともあるだろうし、な?」

「良いこと…」

「そ!行くか?」

「…あと5分だけ待ってくれ」

「あー、それもそうだな…」



少しだけ精神統一しないと
コタツから出られそうもない………
元春も同じような状態、か。
親たちは「本当の兄弟みたい」とか言ってるが、
こんなヤツと兄弟であってたまるか。
幼なじみで十分だ………。





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