01.始まりの前 |
3月。 第一志望の高校に無事合格したから、 思いっ切り羽を伸ばそうとしていたのに…。 一緒に行きたい所が沢山あったのに…。 暖かくなったから 動物園も良いな〜とか 遊園地も良いな〜とか 桜が咲いたらお弁当作ってお花見したいな〜とか やっぱり体を動かしたいからボーリングとダーツとバッティングセンターのフルコース?とか そんな風に勝手に考えていた。 そう、全部私だけが勝手に考えていた。 貴大は違ったんだね。 ちょっと考えてみれば分かる事なのに、 浮かれていて、 そんな事言われるなんて思いもしなかった。 「しばらく会えない」 「え?」 「明日から高校の部活に参加させてもらうんだ。 早く硬球に慣れたいし」 「あーーー、そっかぁ。 春休み、沢山遊びに行こうと思っていたけど、 部活の休みの日まで無理か〜。 残念!」 「…、 休みの日も無理なんだ。 …俺、 しばらく野球に集中したいんだ」 「?」 「俺が行く高校の野球部がどんな所か知っているだろ。 少しでも気抜いたらレギュラーなんてとれないんだ。 だから…」 「あ……。 そっかーー。 うん、…分かった。 それにしても… たーかーひーろー! 言い方間違っているよ! 「しばく会えない」じゃあなくて、 「もう会えない」だよ! もう!」 「…、ごめん」 「うん、ホント勝手……って冗談! 野球頑張ってね! レギュラーとって試合出る時は教えてよ! 見に行くから。 絶対だよ。 ……………………っ じゃ、バイバイッ…!」 私はそれ以上貴大の顔を笑顔で見ている自信が無くなって、 走り出した。 「っ!ご………」 後ろの方で貴大が謝っていたけど、 ダッシュで走っていたから最後の方は聞こえない… 聞きたくない… (私が欲しい言葉はそんなんじゃ無いよ…?) 私は 走って 走って 走って …とにかく滅茶苦茶に走った。 Next→ 目次へ戻る |