06.五月晴れ


時の立つのはあっという間。
生活のリズムが出来てしまえば、本当に何にも考える事なく過ぎてしまう。

陸上部の練習も
朝の早起きも
勉強は…まあ置いといて
友達付き合いも
良い感じにクルクルまわっている。

ただ、部活が無くてぽっかり空いてしまった休日は時間を持て余してしまって、色んな事をグルグル考えちゃう。

「たかひろ…」

声に出して名前を呼べば、
ぶわっと思い出すよ。

貴大、今頃何している?
野球頑張っている?
私の事、少しは思い出したりする?
私は、
今でも…。



体育会系だって恋ぐらいするんですっ。
って誰に説明しているのよー!と一人突っ込み。
…あー、最近独り言多いかも。
高校入ってオバサン化したのかな。

まあ、恋って言っても中学生のお付き合いだから、ラブラブっていう雰囲気だったか微妙だったかも。
お小遣いやお年玉のある時はボーリングやスケートも行ったけど、普段は部活もあったし、二人で遊ぶなんてほとんど無かったな。
遠出したのは仲の良い友達10人位で遊園地行ったときだけ。
誕生日とクリスマスとバレンタインは学校の帰りに公園で会ってプレゼント渡してちょっとおしゃべりして。
それぐらい?

だから高校入って、もっと発展した関係とか期待していたのにな〜。

「発展した関係…」

ボッッッッ。

数日前に起こってしまったアレがあったから変な発想に飛んでしまうのかなぁ?

「あうううううっ…暑いなぁ、今日は」

パタパタ。







忘れもしない、5月1日。

「ニュースでGWの出国ラッシュやってたん見た?あんなん関係あるん暇な大人だけやん〜。」

「ホンット、そうだよね。私なんて連休全部部活だよ〜。若王子先生、自分が何処も出かける予定無いから部活とか課外授業とかするんだよ、きっと。はるひは?」

「うちはバイト。こどもの日はケーキ屋も大忙しになるらしいんや。」

「へえ。和菓子屋だけじゃないんだ。」

「今時のこどもはアンコよりクリームなんかな。鯉のぼりケーキとかも出すらしいんよ。」

なんて、昼休み、中庭のベンチに座っておしゃべりしていたんだ。

五月晴れ、動けば汗ばむほどだけど、風もあって気持ち良いお天気。

「あー、お花屋さんや〜」

「え?知り合い?」

「アナスタシアのグリーン、あの人が配達してくれたんよ。アンネリーってお花屋さん。」

「へえ。」

あの花壇、入学した時からきれいだなって思っていたんだけど、あの人が手入れしていたんだ。

今度はどんなお花を入れるのかな〜って気になってそばによって

「きれいですね!」

って、声をかけてみた。
…のが、まずかった?
そんなにコッソリ近付いたつもり無かったんだけど、
仕事に集中してたのかな?

クルッと振り向いて、慌てて立ち上がったお花屋さん。

覗き込んでいた私。





ドタッ!





「!」






お花屋さんが立ち上がった勢いで
覗き込むためにかがんでいた私は
押し倒された格好になってしまって

「…キ!!!!」

ス???

「あああああ、すまん!大丈夫かぁ?
 あー…制服汚れちまったなぁ。」

「だ、だいじょぶですぅっ…」

「あー!!やっば。急がないと怒られるー…。
 今度ふか〜くお詫びするから。じゃ!」





行っちゃった…。

お詫びするからって、あの人私の名前も聞いていないのに…

あの人は大人みたいだったから、きっと今のぐらいどうって事ないんだろうな。

そうだな。

うん、今のはカウント無しって事にしておこう。

そうしよう。










ボボッッッッ

パタパタ

「暑い、暑い、今日は暑いぞ。
 そうだ、今日は母の日だし、カーネーションを買いに行くついでに涼んでこよう。」

なんか、もう頭がショートしているので、外の風にあたりに買い物に行くことにした。



「アンネリー」

あの人、いるかな?
あ、でも、いてもなんて話して良いか分からないし、探さなくて良いか。

「カーネーション、カーネーション」

母の日だけあって、色んな種類が置いてある。
鉢植え、寄せ植え、花束、…。

「うーん、どれにしよう?」

バイトもしていなくてあまりお金の無い私でも買えるもの…
ウンウンうなりながらカニのように横移動していたら、

ガシャン!

ああ!やっちゃったーーーー…
端っこにあるお花を倒しちゃったよ〜〜〜。

「すみませんっ!」

って慌てて、飛び散った鉢の破片やお花を拾おうとしたら

「お客様、大丈夫ですか?こっちで拾いますから…、あれ?どっかで会ったことあったかなぁ…?えーと…?」

「お、お花屋さん!?」

「……あー!この間はね学でぶつかった後輩かぁ!」

「先輩?」

「そー、オレ先輩。この春卒業したてのホヤホヤ。真咲 元春、よろしくな。」

「私、です。よろしくお願いします。」

「良い挨拶だ。二重丸!こないだ、ごめんなぁ、急いでたから転ばせちまったお詫びもできないで…」

「いえ、大丈夫でしたから」

「そっか?…じゃあ、今日は送らせてくれ。お詫びに。」

「ええっ?!だ、大丈夫ですから」

「なんだ、迷惑かぁ?」

「いえ、そういうことではなくて…」

「じゃあ決まり。すぐバイトあがっから、ちょっと待っててな。
 あー、そうだ、カーネーション買うのか?じゃあ、これなんてどうだ?」





花も決めてもらって
真咲先輩の車で
家の前まで送ってもらった。

、なーんかあったら先輩に相談しろよ〜。」

って、言ってもらって。

お兄ちゃんに憧れていた私としては
すごく嬉しくなっちゃった。

真咲先輩…良い人だ〜。

あの事は忘れて、頼りにしちゃおうっと。





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