15.アルバイト


12月、期末テストが終わった土曜日の夜。
私はクローゼットを開いて、腕を組んで、ウンウンうなっていた。

24日のクリスマスパーティー…

「うーん」

パーティーに着るような服持ってないよぉ!!



23日のセールにかけるしかないか。
でも先立つものがない。
お年玉前借りしようか。
やっぱりバイトくらいした方が良いのかなぁ。
でも試合シーズンは部活忙しいしなぁ。

「はー」

神様仏様魔法使い様〜私に素敵な洋服を下さい〜。
あ、あと、それに似合う靴とアクセサリーもお願いします〜。

いやいや、せっかく頼むならお金もらって自分で選んだ方が良いかな?
50リッチ?いや、100リッチ?!

あー待って待って、神様にかなえてもらえるならそんな事じゃなくて
自分じゃどうしようも出来ない事が良いな。
例えば………、
あと10cm身長下さい!とか!

いやいや、違う話になっちゃってるぞ。
服だよ服。どうしよう…。

あ、電話………!

「もしもし真咲先輩!」

「おー、今日は寝てなかったなぁ」

「いつも寝てるわけじゃありませんー!」

「ははは!
 、期末テスト終わったんだろ?どーだった?」

「結構頑張りましたよ。
 前に、先輩、『勉強もやれー』って言ってたでしょ。
 やるからには中途半端イヤなんで」

らしいなぁ。
 まー無理しない程度にな。
 じゃー、テスト終わって、少し暇だな?」

「まあ、確かに。今は部活5時までだし、試合も無いし」

「じゃあさ、10日間位バイトしないか?
 平日は6時から9時、日曜日は3時から9時、
 帰りは車で送迎付き、
 時給は臨時だからちょっと安いけどな。
 どーだ?」

「神様仏様先輩様!」

「は?」

「あ、こっちの話で…」

「で、どーなんだ?」

「やりますやります!
 でも、なんのバイトなんですか?」

なんでも先輩のバイト先の
アンネリーでインフルエンザが流行ってしまい
とにかく人手が欲しいって事らしい。

少しでもバイト代が欲しいから…じゃなくて
少しでも先輩の助けになりたいと思って
早速翌日からアンネリーへ行くことにした。





「あ…有沢さん、
 よ、よろしくお願いしますっ!
 ですっ!」

「こちらこそよろしくね。
 ところで真咲君…ちょっと…
 …
 あなたね、私の事彼女にどういう風に言ってたのよ?!」

「…いやぁ、何も、特に」

「何もって事ないでしょ。
 あなたが何か言ったから、
 彼女こんなに私の事怖がってるんでしょ!」

「いやぁ、なぁ、ははは」

「…まったく…
 早く配達に行ってきてちょうだい!」

「はいはいー!」

先輩が「有沢は怖いー」って言っていたけど
今のを見る限り
どうやら先輩がいけないっぽい…。





初日は色々覚えるので手間取ったけど、
要領の良い私は次の日から割と役に立ったみたい。





新しい友達も出来た。
私より3日あとにバイト入ってきた子。
臨時じゃなくて普通に応募してきたらしい。
どこかで見た事あるよな〜って思ってたら
話しかけられた。

ちゃんだよね?」

「え、うん、そう。…えーっと?」

「うふふ、私、G組の桐野結花。
 きりの、でも良いし
 ゆうか、でも良いよ」

「………あ!野球部のマネージャーさん?!」

「そう!
 のこと、体育祭で見てから
 いつか話したいなって思ってたんだ。
 あ、って呼んでいいよね?」

「もちろん!じゃ、私は結花って呼ぶね。よろしく!」

そうだそうだ、どこかで見たことあったと思ったら
グランドとか部室の近くで見てたんだな。



あ、そういえば…

「真咲先輩、今日、志波が野球部見てたよ。」

「そっか…あいつ…」

「あのー、やっぱり志波君って野球部見てるんですよね?」

「結花も知ってるの?」

「11月の半ばくらいからかなあ、
 グランドの倉庫の近くに立ってるの、時々。
 春にも見かけた事があって
 『入部するんですか?』
 って声かけたんだけど…
 『違う』って言ってたから
 今回は声かけてなくって…」

「ちょっとあなた達、何無駄話してるの?」

「わっ有沢!おまえら、続きはまた今度!」







結局従業員さん達が復活する22日まで10日以上働いちゃった。

最後の日も先輩は車で送ってくれて

「お疲れさん〜」

って頭をなでてくれた。

「先輩?結花に志波のこと話したら協力してくれそうじゃない?」

「うーん、良い子っぽいけど…
 もうちょっと様子見てみっかな。
 もし、勝己のこと噂で知ってて
 『嫌い』とか思ってたらやっかいだからなー」

「むーっ!それ私のことジャン、先輩!
 しかも過去!すっごい過去!」

「ははは!冗談!」

ちゃんは傷つきました!」

「悪ぃ悪ぃ!機嫌直せって、ほら、これ」

「え?」

「バイト頑張ったご褒美。
 あと、ちょっと早いけどクリスマスプレゼント」

「わー!ミニポインセチア!お部屋に飾りますね」

「おー、クリスマスっぽくなるだろ?」

「はい!
 あーでも私お返しも何も無くって…すみません」

「いいって。
 じゃー、また今度ジュースでもおごってくれ」

「ジュースで良いのならいつでも!」





学校→部活→アンネリーとハードだったけど
初めてのアルバイトは楽しかった〜!!







さあ!軍資金準備完了!
いざ、突撃!

23日、私は初めてのセールというものへ飛び込んでいった。

黒のドレスとシルバーのローヒールをなんとかゲット。
アクセサリーはお母さんに借りれば良いや。

それにしてもあの殺人的な人の多さには、かなりまいってしまった。
女の子ってこれが普通なのかなぁ。
私にはどうも合わない…。

しかし、ドレスを買ってみて、
私も女の子なんだーって感じたことが一つある。

今回買ったドレスは
黒のシンプルなやつ…。
だって私にピンク〜とか水色〜とかの
パステル&ピュア〜なやつは絶対似合わないし、
背も高くないから赤とかのセクシードレスも似合わない。
だから、無難に、黒。
ノースリーブで
膝上丈で
バスト下からスカートまで4段のティアードが入ってる。

で、胸元がちょっとあいてるんだよね。

いつもはスポーツブラして、
さらに、圧迫タイプのアンダーを着て
胸を押さえつけているんだけど…

さすがにドレスでそれはおかしいので
ブラも買ったんだよね…。
もうこの際全部黒って事で
黒のレースのブラを。

なんだかさ、
こんなことまで考えなきゃいけないのって
ちょっとメンドクサイって思っていたんだ、前は。
女ってメンドクサイって。

でも、ちょっとセクシーな下着をドキドキしながら買ったり
家に帰ってからもう1回ドレス着てみたりしたら
なんだかこんなのもたまには良いかもって思えてきた。





さあ、明日はパーティだ!




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