16.クリスマス


「真咲先輩、メリークリスマス!」

?今日ははね学のパーティじゃないのか?」

「そうですよ〜。
 プレゼント交換用の買い物してきたから寄ってみました。
 今日、バイト大変そうですね」

「まあなぁ、クリスマスだしなぁ」

「じゃあ、そんな大変そうな先輩にエールをこめて
 はい!プレゼント!」

「お?なんだーワザワザ気ぃ使わせて悪かったなぁ」

「たいした物じゃないんでそんなに恐縮しないでください」

「あら、ちゃん」

「あ、有沢さん、お疲れ様です!」

「今日は学校のパーティーだそうね。
 ちゃんはどんなドレス着てるの?」

「バイトのおかげで買うことが出来たので特別に見せちゃいます!
 じゃーん!」

着ていたコート、オープン!

「黒…ちょっと大人っぽく見えて良い雰囲気ね」

「わー、有沢さんに誉めてもらって嬉しいです。
 ね?真咲先輩、どう?どう?」

「んー……………あー、おまえ、
 それ、あんまり前屈みに………
 いやいや、オレは何を………」

「先輩?」

「あーーーっと、オレそろそろ配達行かねぇとな…。
 もそろそろ行った方が良いんじゃないか?」

「あ、ホントだ。じゃあ、失礼しまーす!」

真咲先輩が何に慌てていたのかよく分からないけど
とりあえず、プレゼントのお返しも出来たし、
アンネリー寄り道ミッション完了!






「ちょちょちょ!どこへ〜〜〜?!」

「いいから、こっち来な」

パーティー会場へ到着〜って思っていたら
入口で藤堂に捕まって
会場とは別の場所へ引きずられている私。

「なんだい、この頭は?」

「何っていつものポニーテールだよー」

「あんた、ドレスなのに、髪ひっつめただけじゃおかしいだろ?」

「えーそうなのー?」

「ちょっと直してやるからじっとしてな」

誰もいない教室に連れてこられて
髪をほどかれて
カーラーでクルクル巻かれ
その間に顔やら爪やらもいじられて…

「うん、こんなもんだね」

鏡が無いから自分ではどうなったのか分からないんですけどー!

とりあえず爪がきれいな桜貝色になったのだけは認識できる。

なんか口がペトペトするよー。

「あ!なめるんじゃないよ!グロスが落ちる!」

「ふええええん」

「さ!時間だ、行くよ」

「はいー」





「はるひ〜、メリクリ〜」

「メリクリ!ぎりぎりやで、…わぁそれどないしたん?」

「どうもこうも入口で藤堂に捕まって改造された」

「あんたがダサい頭してたからだろ?」

「ええなぁ、めっちゃ可愛いやん!竜子姉、今度うちもお願い!」

「ああ、いいよ」

「メリークリスマス!はるひちゃん、ちゃん、竜子さん!」

「メリクリ!あかり、めっちゃピュアピュアやん。可愛いな〜」

「えーそうかな?ありがとう。はるひもキュートだよ?」

「えへへー、ありがとさん!」

ちゃん、今日はいつもと雰囲気違うね」

「へんじゃない…?」

「あたしがやったんだよ。変なわけあるか」

「そういう意味じゃなくて、そのー、
 自分で鏡見てないからどうなってるのかなーって」

「すごくよく似合ってるよ、ね、はるひちゃん?」

「そうそう。あ、じゃあ、写メしたる。
 どうせやったら…」

???

きょろきょろしてたはるひが
目標物を見つけてタタタッと走り出した。



そして魚を2匹釣って帰ってきた。



はるひはでっかい方の魚をひっぱって

「ささ、志波やん、そこに立って〜。
 はここな。
 はい、撮るで〜」

なすがまま、
ツリーの前に立たされて
写真撮られた。

何故ツーショット?

皆で撮れば良いのに。

あ、

そっか!

「じゃ、次ははるひの番ね」

「え?」

もう赤い顔しちゃって「え?」なんて可愛いんだから。

今度は私が小さい方の魚をひっぱる。

「はいはい、針谷はそこ!
 はるひ、こっち!
 はい、1+1は?」

「「にーっ」」

もう、最初っからこうしたいって言えばいいのに。

次は…

「あれ?佐伯はいないの?」

「佐伯はアッチの方で親衛隊に囲まれてっぞ」

「うわー、ホントだ。なんか大変そうだねぇ…」

「あ、ねえねえ、折角だからみんなで撮らない?」

あかり、気にしてないのかなぁ?

「せやな!あ、若ちゃ〜ん!シャッター押して!」

「やや!楽しそうですね。先生も混ぜてほしいです」

「写真撮ってくれたら混ぜてあげるよ、先生」

「…さん、先生も一緒に写りたいって意味なんですけど…」

「はいはい、2枚目撮るとき入れてあげるから。
 早く早く!」

「…はいはい、いきます、チーズ」

「若王子先生、次はオレが撮ります」

「志波君、優しいですね!
 さんと違って…」

「先生?何かいいましたか?」

「いえいえ、何にも。ささ、もう1枚撮りましょう。志波君お願いします」





ニガコク+αメンバーとわかれた後、
クラスの友達と合流したり
部活の仲間のところでおしゃべりしたり
食事を楽しんだり
パーティー、結構楽しいかも!


でも…


「ふわぁーーーふ」

時間が半分過ぎた頃、
急激に眠気が襲ってきてしまった。
慣れない連日のバイトでさすがに疲れたのかなぁ。

「とりあえず座りたい…。
 …
 あ、あそこのツリーの後ろに椅子発見!」

ヨロヨロッとツリーの後ろに回りこむと
二つ並んだ椅子の一つに
志波が座っていた。

………寝てる?

こんなザワザワしたトコでよく眠れるもんだ。

どうしよっかな。

他に椅子探しに行くのも面倒だよね。

「お邪魔しまーす」

空いていた方の椅子に座ることにした。

座ってみると
いつもは上の方にある顔が結構近くにあって
まじまじと観察してしまった。
黒いなぁ。
地黒なのかなぁ?
よく寝てるなー。
でっかいけど寝顔は子供みたい。
眉間に皺が無いからかな。
眉毛も目も起きているときより少したれてるし。

志波のスースーという寝息を聞いていたら
私の眠気も増幅してきて
瞼が重くなって………。










あったかい。

気持ち良いなぁ。

ふふふ。









ふふ。










むにゃ。









「…おい」

んー?

「…おい」

頭の上から声が降ってくるー。

「…おいっ」

「…んもー…なによー?」

せっかくあったかくって気持ちよく寝てたのに…。
あー………、私、志波の左肩に寄っかかってるんだー。
だからあったかかったの…か………

「………おいっ!
 二度寝するな!
 もうすぐ終わりだぞ」

「んもー…起きれば良いんでしょー…
 ふわわーよく寝た。
 おはよう」

仕方がないから起きて座りなおしたら
肩からショールがフワッと落ちた。
その瞬間、志波がフイッとあさっての方向を向いた気がした。

「あれ?このショール誰の?」

私のじゃない。
なんで?

「西本に借りた。
 …おまえ、それ、ちゃんとかけてろ」

そっぽ向いたままの志波が言った。

「なんで?」

「なんでって…、む…が…
 っ………なんでもだ!」

わけが分からない。
仕方ないから落ちたショールを拾おうとして
足元においてあった二つのプレゼントに気が付いた。
寝てる間にサンタ役の先生た追いてったのかな?

「はい、これ、志波のみたい」

「ああ、サンキュ」

「私のは・・・あれ?これ?」

私が出したお菓子たっぷりサンタブーツ?
戻ってきちゃったの?
んー?でもリボンの色が緑だ。
私が出したのは確か赤だったよなー?
真咲先輩にあげたヤツが青だったし…。
それに、コレ、値札が付いてる。
私、値札とってもらったよなぁ…???

「それ、オレが出したやつだ」

「え?ホントに?
 あー!志波が持ってるの、私が出したやつだ!」

「同じ………っ!ククッ……ははっ!」

うわー、志波が笑った。
しかも爆笑してる。
でも、確かに、コレは笑えるかも!

「ぷぷっ!あははははは!」

「ククッ」

「あははははは!」



自分が食べたいものって選んで出したプレゼント。
真咲先輩にも同じのをあげたんだ。
私のじゃないけど同じのが返ってきてなんだか複雑だけど、
食べたいやつだったし、
なんだか可笑しかったから、
まあ、いっか!







家に帰ってから
はるひからの写メールをじっくり見てみた。

1通目は最初に撮られたツリー前の写真。
あ、私、こんな髪型になってたんだ。
自分じゃないみたい。
ってか、志波、どこ向いてんだか。

2通目はみんなでとったやつ。
これ良いなぁ。
プリントして飾ろうかな。

3通目?なんだろう?
あの後撮ったっけ?

げげっ?!

これはっ?!





座って寝ちゃった時の写真だあ!!

わー、なんか、写真で見ると恥ずかしい!
完全に寄っかかってるっ!!

ってか、志波も寝てて、
私の頭に志波の頭が乗ってるぅっ!!

何これー?!

『志波やんにも送っといたからね』

って、はるひー?!

『そういえば、志波やん、
 しつこく肩に掛けるもんを貸せってうるさかってんか。
 だから、うちもしつこく「なんでー?」って聞いたんやけどな、
 なんか、真っ赤になっちゃって。
 あれな、多分やけど、
 の谷間が見えたんと違う?』

ってーーーー?!はるひーー?!

確かに胸元開いてるドレスだったけど、
普通に見る分には、谷間って…、

あ!

志波大きいから上から見えたってことぉ???
うわーーーーーっ!
恥ずかしい!
何それー?

志波のすけべっ!
あ、でも、かけてくれたってことは
うぶ?
どっちだ?
どっちにしても恥ずかしいことに変わりない!



あーーーー!!!!!

そうか!

真咲先輩も大きいから上から見えたのかなぁ?!?!
うわわーーーーっ!
恥ずかしいよぉ!!!!!



ぎゃーぎゃー、もだえながらも、
この日は本当に疲れて
パタッと寝てしまったのだった。






Next→

Prev←

目次へ戻る