17.凧揚げ


冬休み。
年賀状書いて
部活行って
宿題やって
大掃除やって
紅白見て
あっという間に今年もお終い。

高校生になった今年。
部活頑張ったよね?
でも来年はもっとやらなきゃ。
インターハイ絶対行きたい。

神頼みにでも行こうかな。

歩いて10分ちょっとのところにある地元の神社。
夜中だけど、
今日は人もいっぱい出ていて
危なくないでしょ。
神社で甘酒も配っているはず。
どうして外で飲む甘酒は美味しいんだろう?

テレビで
各地の除夜の鐘を流している中、
私は家を出た。

遠くでどこかから鐘の音が聞こえる。

寒いけど、
真夜中に一人で歩くというのがなんとも新鮮で
そして、
今日が大晦日だからなのか
なんとなく空気もきりっと引き締まって
すごく気持ち良かった。

「わー、もう結構並んでる」

並んでるといっても所詮地元の神社なので
しばらく待って
12時をまわったらゾロゾロと進み始めた。

手に握ってきた20円を投げ入れお参り。

「インターハイに行けますように!」

よーし、お参り完了!
次は甘酒だ!
どこかな?

ん?

甘酒に並んでいる人の列の中に
頭一つ飛び出している2人組がいた。

あれは…
もしかして…
いや、もしかしなくても…

真咲先輩、と、志波?

一瞬声をかけようかと思ったけど

やめた。

クリスマスパーティの時の事を思い出すと
顔を合わせづらい!!!

「ううっ、無念」

甘酒ゲット出来なかったのが残念!







元旦は、
家でダラダラして
年賀状を眺めて
つまらないテレビをボーっと見て
コタツでみかんを食べて
そんな風に過ごした。



2日は親戚が我が家に昼から集まって新年会。

お年玉稼ぎした後、
早々に退散し、
中学の時の友達の家に集まった。

書初め&凧作り、
その後、河川敷で凧揚げ。
中1の時からの恒例行事になっていた。

「誰だー『彼女ゲット』って書いた奴!」

「あ!墜落!今年も彼女はだめだね〜」

「しょぼーん」

「『インターハイ』って書いたの、だろ」

「『甲子園』って書いたの、貴大でしょ」

「お前ら変わんねーなー!」

久しぶりに会ったみんな。

男子は高校入ってから成長期が来たのか
なんだか大きくなっていた。

女子もなんか『女子高生』って感じで
なんにも変わっていない私は
ちょっと気後れしちゃった。

貴大も他の男子と同じで背が伸びていた。
文化祭の時と比べても大きくなっているような気がする。

貴大に会ったのは文化祭以来。
あの妙なテンションはもう無くて
ちょっとホッとした。

「文化祭の時、とっとと帰ってごめんな」

「もう気にしてないよ」

「あいつ、志波のこともさ、悪かったな。
 たぶん、俺、負けっぱなしが嫌なんだよ。
 ちゃんと勝負して勝ちたいんだよな」

「相変わらず負けず嫌いだね」

だって負けず嫌いだろ」

「いいじゃん」

「はは。
 俺さ、最近調子よくてさ。
 今年の夏は先輩追い抜いてエースもらうつもり」

「気合入ってるね〜」

「おー。
 志波が復帰したって負けないぞ、俺は」

「強気だね〜」

「もしそうなったら、、どっち応援する?」

「え?」

「なんだよ?「え?」って。
 俺の方が3年以上友達やってるんだから俺だろ?
 まあ、志波は復帰しないんだろうから有り得ないけどな」

「あ、うん」

「俺ら、春の選抜行けそうなんだよな。
 もしさ、俺が甲子園で投げたら
 お祝いしてくれるか?」

「うん、もちろん!
 そうなったら本当にすごいね!
 あ、それに、ついでに誕生日祝いもできるね」

「ああ、そっか。
 誕生日なんて忘れてた。
 でも勝ち進んだら4月1日はいないぞ」

「じゃー戻って来てからのお楽しみって事で」





「おーい、お前ら何二人でべちゃくちゃ喋ってるんだよー!」

友達の呼ぶ声。

「お前ら出来てんじゃねーのー?」

おーい!違うってば。

「へへー!良いだろう!」

って貴大?!
また、
肩を…。

離して〜〜〜〜!

いったいこの行動は何ー?

「みんな!違うからね〜!」

と必死に言ってみたけど
みんなニヤニヤしちゃって!

中学の仲良しグループだったから
じゃれてるだけって見てくれるだろうけど…。

もう!
人をからかうのはやめて!!





それにしても、
私はあの質問の時、
どうして即答しなかったんだろう?

「もしそうなったら、、どっち応援する?」
「もちろん貴大だよー」

って。

1年前なら
ううん
半年前なら
即答できたのに。

なんで?

いつの間にか
貴大と同じぐらい
志波の事も
友達って
思ってるのかな、私?

貴大の方が付き合い長いわけだけど
「どっち?」の答って
同じ友達だったら
その期間の長さで量れるもんじゃないよね?

そうだよ。「どっちも」だよ。
同じ友達なら。
だから、あんな質問する方がおかしいんだ。

貴大は、
中1で同じクラスになって
一緒に話をしていると楽しくて
だから、好きになったんだよなー。

でも、
友達として好きだったのか、
男の子として好きだったのか、
今考えるとよく分からない。

「好きだった?」

過去形?

今日みたいに
会えば普通に喋れて
前みたいにじゃれあえるけど
夏ごろまでは確かに感じていた
胸がギューッとなる感じが
無くなっちゃった。

貴大の顔を見る。

心、何も動かない。

普通。

そういう言葉がぴったりする。





「インターハイ」って文字の凧が
書いた私の心を無視して
高く高くあがっている。

インターハイ、確かに行きたい。

でも、私って部活だけ女になってる?

友達はそれなりにいるけど
好きな人がいないって状態?
せっかく花の高校生なのに、
そんなのちょっと寂しすぎるかも…。

はあ…。
なんか、新年早々、むなしい。






Next→

Prev←

目次へ戻る