18.スケート(前編) |
どうにかしなければ! 恋せよ乙女! 突撃あるのみ! などと、変な事に気合が入れられるのは 部活もオフシーズンで 他にテンションがあがるものが無いから。 それにしても、相手がいない。 なんかなあ、これといってなぁ…。 せめてバレンタインまでに 「これ!」みたいな相手を…。 身近なところから考えていくと… 同じクラスの津田は話しやすくてスポーツマンで良いよね。 でも、ちょっと、顔が濃い…私の好みの顔じゃない。 それにラグビー部のマネージャーと良い感じらしいし。 同じクラス…佐伯は、ひねくれてるしなぁ。 ひねくれきれてなくてアホだしなぁ。 そういえば、あかりとはどうなってるんだろう? 若王子先生は、先生だし。 なんか時折まともな事を言うし 見た目は大人〜な感じだけど 中身はお子ちゃまでボケボケしてるしねぇ。 だめだ。 同じクラスにはいない。 別のクラス… 針谷は会話がはずむというか いじり甲斐があるというか 反応がガキっぽくって面白いんだけど それだけだな。 早くはるひとくっついて欲しい。 巷で有名なクリスなんとかっていう外国人の人は? でも美術部だよね。 文科系かぁ。 ある程度一緒にスポーツ楽しめる人が良いしなぁ。 陸上部の人は? うーん? 先輩も同級生もなんか今一なんだよね。 長距離の先輩はひょろっとし過ぎ、 投てきの人たちはやたらとマッチョでナルシーっぽい、 短距離の同級生は、背がなぁ、低いんだよなぁ。 自分も低いから気にしなくて良いんだろうけど やっぱり175cm以上が理想だよなぁ・・・。 うーん………志波は? まだよく分からない。 友達なのかどうかも分からない。 朝のランニングで抜かされるたびにムカッとするし。 いつまでもウダウダと野球部に戻れないでいるのもイライラするし。 好きなら野球部入れっ! うーん、やっぱり、分からない。 同じ高校は全滅? 貴大は… 別の高校へ行って その前に「会えない」宣言されて それまで普通にじゃれあっていたのが ぱったり無くなってしまったからなのか 前は確かに感じていた キューっていうのが無いんだよね…。 頻繁に会えれば、またそうなるのかな? うーん? 「ダメだ…」 「恋」の対象になりそうな人が思いつかない。 一緒にいて 楽しくて ホッとして 安心できる人… 「あ!いるかも!」 頼りになって 優しくて 喋ってて楽しい人! でもー、 やっぱり頻繁に会えるわけじゃないし、 なんか、こう、ね。 お兄ちゃんのような領域を超えられるのか 全然想像が付かない。 近いような気がするんだけどなぁ。 真咲先輩。 うーん…。 そして迎えた3学期。 「、おめでとさん〜」 「ちゃん、明けましておめでと!」 「はるひ〜、あかり〜、おめでとう…」 「なんや、新学期早々、お疲れやなぁ、は?」 「うーん、それがねぇ、色々考えることがあって。 ほら、普段は身体で勝負!な私でしょ。 だから脳みそ使うと本当に疲れちゃうみたいで…」 「どうしたの?ちゃん。 悩み事があるの?」 「うーん、それがねぇ…」 冬休みに考えていた事を二人に相談してみた。 でも、話しているうちに、 「好きな人がいないから、どうにかしたい〜」 なんて、自分でもくだらないかなぁって思えてきて… 「あー、やっぱり良いや。 なんか、くだらないよね、こんな悩み」 「いいや!くだらないことちゃう! 女の子はなあ、恋しないとダメ!」 「は、はるひ…」 「けど好きな人って考えて作るもんやないしなぁ」 「そうなの?」 「そうなの。 でもなぁ、さっきが言うてた、 優しくて、頼りになって、楽しくって、安心して、 っていう人は違うんちゃう? 恋愛って、 楽しいだけやなくて ドキドキしたり 切なくなったり 苦しくなったり ハラハラしたり 落ち着いていられない、 そういうもんやと思う」 「そうなの?」 「いつの間にか 彼ばかりを目で追っていた。 彼のどんな言葉にも 私の心はグラグラと動き、 彼の表情一つで 私も嬉しくなったり悲しくなったりする。 … こんな感じやなぁ」 「はるひちゃん、恋愛小説の読みすぎだよ…」 「あ、あは!ばれた〜? あかり、鋭い! でもほんまに恋愛し始めたら ホッとする暇は無いんやないかなぁ?」 「ホッと出来ないの?」 「そうや。 それより、、ほんまに校内に気になる人いないの?」 「うーん?」 「うちは、あの人なら似合うて思てたんやけどなぁ」 「あ、私も! あの人ならちゃんに良いんじゃないかと思ってた人いる!」 「ええ!? 何それ、二人とも。 誰?誰なの?」 「それは〜、自分で見つけないと。 うちらが言って変に意識したらダメやし」 「そうだね、はるひちゃんの言うとおり!」 「ま、は、もう少し時間かけて、 分かっていけばいいんちゃう?」 「そうそう。 でも、ちゃんって考え出すと止まらない性格だからねぇ。 とりあえず、一番気になってる人を誘ってみたら? もししたら、ドキドキに変わるかもしれないし、ね?」 「あかり…なんで私が猪突猛進型だって分かるの? でも、二人ともありがとう。 少し分かったような、分からなかったような、 誰かに話したらちょっとスッキリしたというか、 うん、とにかくありがとう」 よーし、こうなったら、 二人の意味深な言葉は気にせずに まずは真咲先輩にぶつかってみよう。 『To:真咲先輩 明けましておめでとうございます。 って年賀状にも書きましたが(^^) 冬ですね。 寒いときはスポーツ!ってことで スケートに行きませんか?』 ふー、なんかいつものメールなのに緊張するっ。 『To: 元気そうだなー。 スケートか、久し振りに良いな。 ちょうど新聞屋からもらった券があるぞ。 いつにする?』 『To:真咲先輩 21日は部活なので、それ以外ならいつでもOKです』 『To: じゃー、14日な』 変に気合入れて誘ってみたけど やっぱり真咲先輩は真咲先輩だなぁ。 胸に手を当ててみるけど 別にドキドキしていない。 「いやいや、これからこれから!」 ふぁいと、おー! 「…なんで志波がここにいるの?」 「元春に誘われた」 何ですって? どういうことなのでしょうか? 真咲先輩との約束の日、 待ち合わせ場所にいたのは志波だった。 「何で?」 「『オマエも来たらアナスタシアの新作おごる』って言われた」 「ケーキで釣られるって…」 「…元春、遅いな」 「まだ待ち合わせの時間まで10分あるし。 志波はなんで早く来てたの?」 「…時間まちがえた、みたいだ」 「ぷっ」 「笑うな」 「ぷぷっ」 「…」 「おーい!〜!…と、志波君?」 「あれぇ?結花? あ!もしかして 結花も真咲先輩に誘われたの?」 「うん、そう。 えっと、なんか、バイト頑張ってるからご褒美って」 はは〜ん。 なるほど。 そうか。 真咲先輩の考えが読めた。 それにしても、コイツはボケーッとしちゃって… 「ほら、志波。自己紹介しなよ」 「あ、ああ。志波 勝己」 「なんて愛想の無い…」 「私、G組の桐野結花。 野球部のマネージャーやってて アンネリーでバイトしてるの。 志波君、よろしくね」 「…」 志波ってば「野球部のマネージャー」ってところで 完全にかたまったな。 こんなんで上手くいくんでしょうか?先輩? 続く! Next→ Prev← 目次へ戻る |