20.真咲先輩誕生日 |
あー!忘れるところだったあ! 明日は真咲先輩の誕生日! どうしよう? 何あげよう? 部活帰り、 商店街のファンシーショップに とりあえず駆け込んだ。 「うわーん!何が良いか分からないよ〜!」 あれでもない! これでもない! 大学生って何が嬉しいんだろう? ハンカチは、父の日みたいだし、 ピアス…た、高い… レポートいっぱい書くって言ってたから、疲れないシャーペン…って、健康オタクみたいで可愛くないし、 車に置くものは?ぬいぐるみなんて置かないよなあ…。 「はー…」 決らない…。 ガックリして、下を向いた時に目に飛び込んできたやつ。 これ、どっかで見たような…? なんだったっけ? 丸くて黄色いマーク。 確か…真咲先輩の服にこんなマークがついてたような…。 サクマドロップと同じ位の大きさの缶。 中身は絆創膏セット。 バイトで指先怪我することあるよね。 うん、これにしよう! 誕生日当日。 部活の帰りにアンネリーに寄って渡す… つもりだったんだけど、 真咲先輩が見当たらない。 「結花〜オツトメご苦労さまですっ」 「あれー?、どうしたの?」 「あのね、真咲先輩は?」 「あー、そうか! 、誕生日プレゼント持ってきたのね?」 「ピンポン」 「先輩、今、配達中だよ。 さっき電話あって渋滞で遅くなりそうって」 「えーーー、そうなんだ。 どうしようかな」 今、6時半。 ご飯までに帰れると思ったのに。 どうしよう。 「が良ければ、私が預かろうか?」 「うーん…直接渡したい、かな。 一旦家に帰ってご飯食べて お店が終わる頃にまた来るよ。 先輩にメールするからって伝言お願いできる?」 「分かった。伝えておくね」 仕方ない。 ちょっと夜遅くなっちゃうけど やっぱり直接渡したいしね。 それに今日じゃないと意味無いし。 『To:真咲先輩 商店街のはずれにある児童公園で待ってます。 バイトが終わったら来てね。』 よし。 これでOKっと。 時刻は夜9時。 夜の児童公園。 小さな敷地に ベンチと滑り台、ブランコ、砂場だけがある公園。 さすがに誰もいなくて寂しいけど ひとり締めしているみたいで ちょっと気分が良い。 家からジョギングしてきたから それほど寒くは無いけど、 吸い込んだ空気がとっても冷たくて 喉や肺がちょっと痛い。 ベンチに座って白い息を吐く。 冬の空は澄んでいて 街の中なのに星がキラキラしている。 タッタッタッ… かなり急いで走ってくる足音が聞こえてきた。 「真咲先輩!」 嬉しくなって駆け寄っちゃった。 「走って来たんですか? ゆっくり来ても良かったのに…」 ってニコニコしながら言ったのに 先輩は急に怖い顔して 私の肩に両手を乗せてをガッとつかんだ。 「はぁはぁはぁ…っ。 この…バカ!!!」 「え?」 バカ?なんで? 「オマエなぁ、こんな遅い時間に、 こんな暗い所で一人で待つなんて 何考えてるんだっ!?」 「あ…」 「…はぁーっ、マジで心配したぞ。オレはっ…」 先輩が怒った。 初めて怒ったの見た。 怒られているのは私なのに なんだか他人ごとのように 怒っている先輩をマジマジと見てしまった。 「だって仕事の邪魔しちゃ悪いし」 「そんなの気にすることねーだろ」 「だって私もうアンネリーのバイトじゃないから 事務室で待つのも悪いし」 「元バイトなんだから大丈夫だろ。 それに結花もいたんだから預ければいいだろ?」 「だって自分で渡したかったし」 「じゃあ、別の日で良いじゃねーか」 「だって今日じゃないと意味ないし」 「だからってこんな暗い所に一人なんて危ないだろ」 「だって危なかったら走れば良いし。 逃げ足には自信あるし」 「…あのなぁ、いくら逃げ足が速くても こうやって捕まえられたら逃げられないだろ?」 私の肩に乗せた 先輩の手にグッと力が入って動けない。 「…いたいよ、先輩」 「あー、悪ぃ。 とにかく、心配かけさせんな」 肩に乗せた手を緩めて 大きな右手がポフッって頭に乗った。 今度は痛くない優しいフワッとした感じで。 「…心配かけてごめんなさい」 「やーっと素直に謝ったな。 、オマエは大事な後輩なんだ。 それに弟分の友達だしな。 だから遠慮する必要ねーからな」 「はい」 「じゃ、送っていくぞ」 自宅前まで車で送ってくれた先輩。 降りる前にプレゼントを渡した。 「サンキュ」 と言って、また頭をポフッとなでてくれた。 Next→ Prev← 目次へ戻る |