36.体育祭(2年目)
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キラリーン 待ちに待った体育祭! 絶好調ーーー!! 「ちゃん、一位おめでとさん!」 「クリスが描いたクラス旗のおかげだよ〜」 「ほんまに?そう言ってもらえると、めっちゃうれしいなぁ!」 「ホントだよ。今日一日ずーっと頑張れる!」 手を取り合ってキャッキャとはしゃぐ。 クリスって和む〜。 アートはよく分からない私だけど、 オレンジ系の色がパワーを引き出してくれる。 おかげで100mも1000mも快勝! 「あ…!」 「クリスどしたの?」 「目からビーム…」 「え?」 クリスの視線を辿ってクルリと振り向いてみたけど その先にはスイッと横を向く志波がいるだけ。 ビームって? なんかこういう事前もなかったっけ? あかん〜とか言いながら 離れて行ってしまったクリス。 なんなの??? 「志波、クリスになんかしたの?」 空いてた志波の隣に座って聞いてみた。 「別に、何も…」 「そう?」 なんか機嫌悪いのかなぁ。 楽しい楽しいお祭りなのに。 「先輩!ハァハァ…」 「はい?」 誰? 1年生? 学ラン?? 「あ、志波先輩、こんにちは!」 「…?」 志波の知ってる子? でも志波は「だれだこいつ」って顔してるし、誰? 「ああっ、そうだ、先輩! これっ、お願いします!」 差し出された紙には 『速い女子』 って………………ああ! 「借り物競走?いいよ、行こ!」 サッと立ち上がって1年の左手をつかんで走り出した。 「わーっ!ちょっと待ってくださいー!」 「待たない!走れ、…えーっと?」 「天地です。天地翔太…わー!」 「走れー!天地!!」 「はいいい!」 「なんだ、ちゃんと速く走れるじゃん」 「そりゃ、鍛えてますから」 「なんで学ラン?応援部?」 「そうです。あ、来週陸上部の応援行きますからね」 「サンキュ!って、私の事知ってるの?」 「もちろんです!時々部活で見かけてました。 今日の100mもかっこよかったですよ」 「あはは、ありがと!天地もカッコイイね」 「…お世辞なんて言わなくていいです」 「ん?お世辞なんて言ってないよ?学ラン、似合ってる」 「あ…ありがとうございます…」 「ほら、どんどん走るよー!」 「はいいいっ!」 想定外の出番だったけど、 これも一位ゲットで楽しめた。 フフッ 「ただいまー!」 「…楽しそうだったな」 「うん!志波は楽しくないの?」 やっぱり、なんかブスーっとしてるなぁ。 志波だって400mとか一位になった時は ちょっと笑ってたのになぁ…。 「分かった!眠い!」 「違う…」 「あー、じゃあ…」 楽しみだったから 言うのやめてたんだけど… 「…やっぱり二人三脚出たくない、とか?」 「そうじゃない…」 「…いいよ、面倒だなぁって思ってるんでしょ?」 「だから…違う」 「クリスとか津田とかに代わってもらおっか?」 「ダメだ!」 サーッ… 志波が急に大声出すから 周りのクラスメートが引いちゃったじゃん! 「そんな大きな声出さなくても…」 「あ…スマン」 「えーっと、じゃ二人三脚はそのままってことで」 コクリと黙って頷く志波がみょーに可愛いんですけど〜!! 「はぁ〜、よかった」 「…よかった?」 「うん。やっぱり志波じゃないと」 「…オレ?」 「完全勝利のためには」 「ああ………ハァ…」 ??? ため息って…? も、とりあえずこの話題はやめておこう…。 「ちゃーん!パン、ゲットしたよー!」 「あかり!結花!おかえり〜!」 「じゃーん!『極上粒々白玉あんぱん』!」 「つぶつぶ?」 「中に小さい白玉が沢山入ってるの。 半分あげるね、ちゃん」 「ありがと」 パクリ あんぱん自体も美味しいけど つぶつぶの白玉がもちっとしてて おいひ〜! 「結花は?」 「えっとね『究極夕張メロンパン☆果肉入り』だって。食べてみる?」 「んー…そこで欲しそうに見ている人にあげたら?」 「うふふ、本当だ。志波君半分どうぞ!」 「ああ…、サンキュー」 美味しいものでも食べて 機嫌がよくなれば、 って思ったんだけどね。 確かに機嫌がよくなったかも、なんだけど、さ。 パンが美味しかったのか 結花からもらったからなのか……… ううーん、今日は考えない、そういう事は! 楽しもう! 楽しむんだ! 午後一は学年別クラス対抗リレー。 あかり、津田、私、志波の組み合わせは 最強だったみたいで2-Bは余裕で一位! 「「「やったー!!!」」」 志波が一位でゴールしたところへ 私とあかりと津田は駆け寄って 4人で手を取り合って喜び合った。 ぴょんぴょん跳ねながら喜んでた私とあかり。 津田もクラス席に向かってガッツポーズ。 志波はそんな状態にイマイチのれないのか あまりリアクションが無い。 でも「やったね」って見上げてみたら ニッコリしてたから ちゃんと喜んでるみたい。 よしよし、この調子! 楽しく楽しく。 ドキドキワクワクソワソワ 「そろそろ行くか?」 「あ、もう集合時間?」 なんて、それとなく言ったけれど 実は「待ってました!」って叫びたいぐらいに テンションあがってまーす! 二人三脚障害物競走。 その名のとおり、二人三脚でスタートし、 3本並行に並んでいる平均台の上を進み、 低い跳び箱を何個か乗り越え 麻袋に一緒に入ってぴょんぴょん飛ぶ。 最後の20mを『指令書』に書いてあるとおりに走る。 まずは先生だけのレース。 色んな声援が飛んでいる。 「やや!どーもどーも!!」 ってのん気に手をふってる若王子先生だけど 別に先生だけを応援しているんじゃないのに…。 隣にいる時ちゃん先生も困り顔。 それでもスタートしたら 結構二人は速くって 2-Bは大盛り上がり!! 「若ちゃん行けー!」 「時ちゃん頑張れー!」 首位をキープしたまま指令書ポイントへ。 1枚引いて書いてある事を確認。 「任せてください」 若王子先生が胸をドンッと叩いて得意のエッヘンポーズをした。 時ちゃん先生は「大丈夫ですか?」って顔してるけど なんて指令なんだろ? 足を結んでいた紐をほどいて 用具係からバットをもらって おでこをつけてグルグル回りだした若王子先生。 それをハラハラ顔で眺める時ちゃん先生。 10回まわった後の若王子先生は… 誰もが予想したとおり、ヘロヘロで… 「わ、若王子先生、乗ってください!!」 「はあ…、お役に立てず、すみません…」 「ホントですよ………。 しっかりしてくださいよぉ… 何が任せてください、ですか…もうっ…」 フラフラでまっすぐ歩けない若王子先生を 時ちゃんがおんぶしちゃったよ!! 足をかかえるのはムリみたいで 若王子先生の手だけ背負って ズルズル引きずってく。 「時ちゃーーーん!!」 「頑張れーーーー!!」 いくら若王子先生が細く見えても 男なんだから体重は結構あるだろうに 時ちゃんは立ち止まることなく なんとかゴール…。 「時ちゃんよくやったー!!」 すべての声援は時ちゃん先生へ。 若王子先生、ダメダメだー。 指令は他にも 後ろ向き、スキップ、ペアのどちらかが目隠し、 などなど色々あるみたい。 いよいよ、私達の組。 やっぱり身長差が有りすぎて 私は志波の肩を組めなくて 結局志波の腰をつかむことにした。 「くすぐったくない?」 「ああ、くすぐりには強いから大丈夫だ」 「へぇ…」 私だったらあんなところ持たれたら くすぐったくて死んじゃうのに… ってこれもニガコクになりそうだから言わないどこう。 「あー!針谷とはるひ!一緒の組なのー?」 「おっ、と志波が一緒か。だが俺様は負けねぇぜっ!」 「志波やんとやなんて、ずるいコンビやなぁ!」 「ダイジョウブだ!俺様には秘策がある。必ず勝つ!」 ニヤニヤ笑ってる針谷がムカつくー! 「志波…絶対勝とうね」 「ああ」 『用意… パァン!』 スタート! 行くぞー!! 「ベイサイドブリッジで懸垂っ!!」 「うっ!」 「はは!志波、お先に!」 「、堪忍してや〜!」 ちょっ!なんて事を、針谷のやつーー!! 志波がショック状態になってるじゃん! 「ちょっと、志波ー!しっかりしてー!」 出遅れた、ムカつくー! 「もうーーっ!走ってよー!!」 呆然としている志波をグイグイ押して なんとかズルズル走り始めたんだけど スピードが出ないー! 「一位になったら何でも言う事聞いてあげるから 今は私の言う事聞いてー! お願いー!」 「…何でも?」 「うん、何でも。ね、だから、速く!」 「………よしっ」 あ、なんか気合入った。 もう何でもいい。 とにかく遅れを取り戻さないと。 その後は、かなりスピードに乗って走ることができて 指令書のところでなんとか一位の針谷たちに追いついた。 「んーーー、これだ!」 私が指令を選ぶ。 紙を開いて中身を確認。 『おんぶ、または、抱っこで走れ。 ただし、男子がおんぶ(抱っこ)する場合は、 バットにおでこをつけて10回その場で回ってからとする』 こ、これか! さっき若王子先生達が引いた指令は!! きっと先生もおんぶしようとしたんだけど ヘロヘロになって時ちゃん先生がおんぶしたんだ…。 「よしっ、おい、バット貸せ!」 志波が気合入れてまわり始めて、 針谷達が後ろ向き二人三脚で走り始めた時には、 ものすごいスピードで10回まわりきった。 「行くぞっ」 って言葉には気合入ってるけど まっすぐ歩けてないよ、志波? 仕方ないから、私の方から志波に近寄って 「えっと、背中に乗ればいい?」 って背後にまわろうとしたら、 ブワッ って体が浮いたー!! こ、これって、 いわゆる、 オヒメサマダッコー? でも、ちょっ、待ってーー! ヨロヨロ傾きながら進むから怖いー! 「わわっ!」 「悪ぃ…絶対落とさねぇから」 そんなん口だけなんじゃ…? だってゴールの方、向いてるはずなのに、 なんか横へ横へ移動してるみたいなんだもん! とりあえずつかまっとかないと…。 でも、時々軌道修正しながら 後ろ向き二人三脚でノロノロしていた 針谷とはるひをなんとか抜いた。 「がんばれー、志波、あと少しだよ?」 2-Bだけじゃなくて 色んなところから沢山声援が飛んできて なんかすごいことになってるぞ。 注目浴びるのは好きなほうだけど これは、ちょっと、恥ずかしいかも…。 でも、志波が頑張って一位でゴール! 「やったー!って、どこ行くの?!」 ゴール突っ切って そのままグランドを出て 裏庭へつれてこられて やっと下におろされて 志波はドサッと座った。 なので、私も隣に座って、 まずはハイタッチ。 「やったね」 「…ああ」 「もう目まわってない?…フフッ」 「…大丈夫だ。ククッ」 「おもしろかったね」 「ああ」 顔を見合わせて笑い合って なんかイイ感じだー。 エヘヘ、嬉しい。 「それにしても、なんで、ここに?」 「ゴールの正面に…」 「うん?」 「…お袋がいた。カメラ持ってすごい笑顔で」 「えっ?」 「コッチ来いって手招きしてたから逃げた」 えええ?! カメラですごい笑顔って… 志波のお母さんって?! プ… それにしても、おんぶで良かったのに なんでオヒメサマダッコだったんだろう? どういう思考回路? ププ… 逃げた… って、絶対その前に写真とられてるし! 家でお母さんに突っ込まれたりするのかな? 志波が? プププ… 「プァハハハハハハ、フッ…ハハハーーー!」 「…笑いすぎだろ」 「だって、志波、お母さん、おもしろ…苦しー!」 「…まったく、勝手にしろ」 ツボ入って笑いが止まらない。 志波は怒ってるというよりあきれる感じで見てたけど。 私はしばらく笑いがおさまらなかったよー。 最後の紅白対抗リレーは 1年がイマイチだったけど 2年の私と志波で一位に順位をあげて 3年生がそのままゴール。 去年のリベンジ、できた。 今年も赤組優勝。 色々あった一日だったけどすごく楽しかった。 この楽しい気持ちは一生忘れない! Next→ Prev← 目次へ戻る |