49.修学旅行1日目



もう学を修めんのかよ?!
というツッコミをする生徒に
「修学には、学んで知識を深めるという意味もあるんですよ?」
と冷静に返す時ちゃん先生。
さすが国語(古典だけど)の教師!
生徒の無茶なツッコミにもなかなか慣れてきたよなぁ。
まあ、横にボケがいるからツッコミも上手くなるんだろうけど。



そんな会話を聞きつつ新幹線に乗り込む私達。
座席をボックス型にしてあかり、結花、千代美と一緒に座った。

窓際でなくても
後ろ向きでも
いいの!
志波が斜め前方(進行方向からしたら後の方ね)に
見えるように座ったのは内緒デス。



「さあ!おやつおやつ!」

さん、まだ発車したばかりですよ?」

「いいじゃん、千代美〜!食〜べ〜た〜い〜!」

ってば………たけのこの里いる?」

ちゃん、小枝食べる?」

「結花、あかり、サンキュー!私のきのこの山もどうぞ〜!」

「仕方ありませんね。私のポッキーもどうぞ」

「千代美、好き!」



朝ごはんはしっかり食べてきたよ。
でもさ、旅にお菓子とおしゃべりは付き物だもんね〜!







調子にのって食べまくったことを30分後には後悔した。



「う…気持ち悪い………」

、大丈夫?」

「ダメ………トイレ行ってくる」



高校生にもなって乗り物酔いするなんて……なさけない。
志波は………寝てる。
よかった。
こんなヘロヘロ見せたら恥ずかしい。

でも、新幹線の微妙な揺れって気持ち悪くなるでしょ。
窓も開かないし。



………外の空気すいたい。



トイレでしばらく過ごし、
なんとか落ち着いてきて
ヨロヨロと出てみたけど
座席まで戻る元気が無い。

ドアの近くなら少しは外気が入るかな?
通路じゃないし邪魔にならないかなって思って
ドアのそばにしゃがんでみた。



「ハァ…」



ああ、まだ出発したばっかなのに、
なにやってんだろうなぁ、私ってば。
調子に乗りすぎ。
私のバカバカー!



ちゃん?大丈夫?」

「あ、あかり、しばらくここにいるわー……
 みんなに言っといて……」

「わかった。
 あのね、先生に聞いてみたんだけど、
 酔い止めの薬は無いんだって」

「そっか、ありがと」

「じゃ、戻ってるね」



うう、迷惑かけてるなぁ、私。
楽しい気分に水さしちゃった。



「うわ!おい、大丈夫か?」

「はあ、なんとか」

「そんな所に人がいると思わないからビックリしたぜ」



って、誰?
んー隣のクラスの男子?
なんかの選択授業で見た事あったような………?



「酔ったの?」

「そうみたい」

「元々弱い?それともなんか食べた?」

「えーっと、ポッキーと小枝ときのこの山とたけのこの…」

「ブ…ハハハ!チョコばっか!気持ち悪くなるよ、それ」

「えー!でも、新幹線の微妙な揺れも気持ち悪いんだよー!」

「あ、それ言えてるかも」

「でしょー?」

「いやいや、でも、やっぱりチョコの食べ過ぎだろうな」

「えー!」



あは、なんか気が紛れるかも。
この人、座席戻らなくていいのかな?
気使ってくれてるのかな?



「アレ?に伊藤、どうした?」

「あ、津田」



この人伊藤っていうんだ。
津田の知り合いだったのか。
じゃ、ラグビー部?



が酔ったんだって」

「マジで?が?」

「なにが言いたいの、津田」

「意外!
 乗り物酔いって、なんつーか、こう、
 もっと繊細なヤツがなると思ってた!」

ちゃんはセンサイなんデス」

「えー!は違うだろ!」

「どういう意味よ?!」

「だってなー」

「だよなー」

「なによー!」

「「ははは!」」







二人がしばらくおしゃべりに付き合ってくれて
気持ち悪いのも大体おさまってきた。



「あの、ありがと、二人とも。
 もう大丈夫みたい。
 付き合ってくれて本当にありがとね。
 私ももう少ししたら席戻る」

「お、そっか。よかったよかった」

「じゃあ、戻るわ」

「うん、ありがとー」



バイバイと手をふっていたら
津田と入れ違いに志波が車両から出て来た。



「どうかしたのか?」



伊藤が行った方向をを見ながら眉をひそめてる。



「えっと、気持ち悪くなっちゃってここで休憩してたら
 話し相手になってくれたの」

「気持ち悪いって……もう、大丈夫なのか?」

「うん、話してたら大分楽になった」

「そうか……」

「なに?」

「いや…」



なにか怒ってんのかな?
ピリピリしてる。
それとも寝起き?
時々こういう感じあるよなあ、志波って。



「志波は?新幹線なんてずっと寝てるんだと思ってたよ、フフフ」

「ん?………散歩」

「さんぽ?!新幹線の中を?あはははは!なんか志波っぽい!」

「ほっとけ」



ふふふ、変だ、相変わらず、おかしい!
そういうのを見れるのも嬉しいんだけどね。



「さてと戻ろうかなぁ」



そう言って立ち上がってから気が付いた。
足、痺れて………イテテ、いいいいい?!

「わわっ」

転びはしなかったけど、
志波の腕にガシッとつかまってしまった。



「ご、ごめん、志波」

「なにやってんだか」

「あはは、足痺れちゃって」

「ったく」

「わー!動かないで!まだ痺れてて痛いー!」

「はあ?」



そんなにあきれなくても………
動けないんだから仕方ないじゃん!



「ハァ…」



ため息つかれてもムリなものはムリ!
両足ジンジン痺れて痛いよぉ………。



う………



なんか………



立ち上がったら………



新幹線の揺れが………



「き、気持ち悪い……」

「はあ?」

「ダメだ……どいて、トイレ行く」

「動くなの次はどけか……」

「早くどいてー!」

「ハァ………いってらっしゃい」



あー最悪だ。
みっともない……。
うー……気持ち悪………







京都着いてすぐにバス移動………
って私をコロス気ですか?!
あーもー……グッタリ。
そして、着いた先で昼食………
ってムリだから、ホント!



ちゃん、食べないの?」

「うーん、まだなんかムカムカしてて……あかり、食べる?」

「え!そんなに食べられないよ」

に食欲がないなんて信じられない…」

「結花〜……はぁ、ダメだ……反論する元気もない」

「美味しいのにもったいないね」

「そうよね………食べられそうな人にあげる?」

「志波くんならたくさん食べられそうだね」

「そうだね。、まわしちゃうよ?」

「いいよー」



私のお昼ご飯(松花堂弁当)は
大広間の長机を
バケツリレーのように
「志波くんへ」
「志波にまわせってよ」
「ほら志波」
と無事にまわっていったみたい。

サヨナラ………私のお昼ご飯………。



さん、大丈夫?」

「時ちゃんせんせ〜い、まだちょっとムカムカって」

「うふふ、はい、薬」

「あれ?酔い止めは無いって」

「買ってきました。先生なかなかやるでしょ?」

「あ、ありがとうございます!」



これでこの後のバス移動も安心だ!!
はぁ、よかった〜!







一日目は団体で奈良観光。
午後だけだから
バスでドンドン移動して
お寺を見れる時間は少ない。

本日最後の奈良の大仏も見終わって、
今は奈良公園でちょっとだけ自由時間。



「うー……」

ちゃん、薬効かなかったの?」

「……お腹が……」

さん、もう一回先生にお薬もらってきましょうか?」

「……すいた……」

「「「ええ?!」」」

「おなかすいた!おなかすいたー!」

……心配したじゃない!」

「あはは、ごめんごめん」



すっかり元気元気!
そしたら猛烈にお腹がすいてきたんだよー。



「鹿煎餅っておいしいのかなぁ?」

、しっかりして!おいしいわけないよ、あんなの!」

「そっかぁ、そっかなぁ………」

「バスに戻ればお菓子の残りがあるから、ね、ちゃん」

「うー、わかった………我慢する」



「あ、若王子先生が鹿煎餅買ってるわ」

「鼻の穴くぐりでハマってたの抜けられたんだね」

「若王子先生!なにしてんの?!鹿煎餅食べるの?」

「先生、志波君と勝負です」

「「「「なんの?」」」」

「どっちが鹿さんをたくさん集められるか!
 皆は先生を応援してくれるよね?」

「「「「…」」」」

「……もういいです。
 おっと、こうしてはいられません。いざ、勝負!」



志波のもとへ駆け寄っていく先生。
あ、でも、既に勝負はついてるね、ありゃ。



「志波くん、すごい……」

「………いったい何頭いるんだろうね?」

「あんなに囲まれて身動きとれないんじゃ………?
 あ!そうだ、おもしろ写真撮らなきゃ!」



デジカメを取り出して鹿に囲まれる志波を撮る。
横で「鹿さん、美味しい煎餅ですよー」と騒いでる先生も入れてみた。



「わーい、いい感じに撮れた!みんなも撮ろ?」



あかりと結花と私、3人のバックに、鹿の群れが写るように
手を出来るだけ伸ばしてセルフ撮り。
帰ったら真咲先輩にあげないとね、結花のうつってる写真。
今日は新幹線の中で寝てる志波も撮れたし
コッソリいい写真増やすぞー!



修学旅行は始まったばかり!






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