53.G.T. in a bath.



「ふーっ………」



今日も暑かった。
それに色々歩き回ったからちょっと疲れたかな。

で、お風呂タイム。
疲れた足をモミモミしながら半身浴したり、全身つかったり、はぁ………気持ちいいなぁ。
でも、でも、疲れたけど、だ・け・ど、今日はホントに楽しかった。
ふふふ………。



ちゃん、もしかしてなんかいいことあった?」

「なあに?、何があったか言いなさい!」

さん、ぜひ教えてください!」



興味津々という表情で湯船の中をザブザブと詰め寄ってくるあかりと結花と千代美。
そこに、はるひも飛び込んできて………E組は私達より入浴時間遅いはずなのに………。



!今日、あれからどうやったー?!」

「はるひちゃん、何か知ってるの?」

「おー、あかりー!あんなー−−−」



私に電話をするまでの過程をみんなに話し始めるはるひ。
それ、私も聞きたかったんだよ。
なんで志波が来てくれることになったのか。
でも状況は分かったけど「なんで?」の部分はやっぱりよく分からなかった。



「で、ちゃんと会えたんやろ?志波やんと!」

「うん、会えた………はるひ、ありがとね、色々」

「ええねん、ええねん!話聞かせてくれたらな」



あかり達も期待と好奇心が入り混じったキラキラした目で私を見てる。



「う………でも、話するほどのことは、別に、何も………」

「なんかあるやろー?」

「えーっと、はるひから電話をもらったあと、川原で待ってたら志波が来た」

「そ、その時のお気持ちは、さん!」

「えっと、ビックリかな。なんでここにいるの?みたいな感じ」

「それから、どうなったの、ちゃん!」

「んーっと、みたらし団子を食べに行って」

「いきなり食べ物?あかん、色気なしや………」

「で、下鴨神社行って、お昼食べて」

「え?もうご飯?その前にお団子食べたんでしょう?」



ふええーん、何か言うたびにみんなのツッコミが入る〜〜〜。
でも話さないと怒られるから、今日行った場所と食べたものをなんとか全部報告した。



「それだけなん?」

「それだけだよ」

「告白したとか、されたとか、そんなん無いの?」

「ええええ???無いよ、そんなの!」



なんだー残念ーとかみんな口々に言うけどそんなに簡単に前進できないよ。
そ、そりゃ、ちょっとはいい雰囲気になったりもしたけど………。
自由行動ですらきちんと誘えなかったのに、
告白なんてハードルが高すぎる。



「じゃ、明後日の自由行動はちゃんと約束したんやろな?」

「あ、それは、したよ」



そう、明後日の自由行動だって、私から誘ったんじゃなくて誘ってもらっちゃったんだ。
今日、宿に戻って来たときに。











「志波、今日ありがとね」

「いや………オレの方こそ」

「一緒にまわれて楽しかった。ホントにありがと」

「………

「ん?」

「次の自由行動はどうするつもりなんだ?」

「行ってみたい所はあるんだけど、具体的には何も考えてなくて………」

「そうか………なら、オレも付き合う」

「え?ホント?」

「ああ。さえよければ」

「こちらこそお願いしたい、デス。………あ、でも、志波は予定あったんじゃないの?」

「ない………まあ、あったとしても独りにすると泣くヤツをほっとけないからな………ククッ」

「な!!あれは、たまたまで!っていうか、いいじゃん、もう!そんなに笑わないでよ!」



ううう、ニヤニヤ笑って憎たらしい………。
睨んでたら頭の上にポスンと手を乗せられた。



「笑って、悪かった………けど、ほっとけないのは本当だから」

「え?」

「………じゃあ、明後日もこの場所で」

「あ、うん」



ほっとけないって、どういう意味?
子供扱いされてるのかな、私………。
なんなのかなぁ???

でも、次の自由行動の約束できちゃった。
やったー!











「じゃあ、明後日やな、告白は」

「えええ???しないよ、そんな、心の準備できてないもん!」

「なんでや?どーんと当たってきいや」

「えええ???ホント無理だから………って、そう言うはるひはどうなのよ?」

「え?うち?あはは!内緒や!」

「なんで?私のは聞いたくせに!!」

「わっ!お湯をかけるんは反則やで!!」

「わっぷ!はるひだってかけたじゃん!!」



こどものようにお湯をバシャバシャかけ合ってたら、
あかり達に白い目で見られたのでそっちにもかけてやった!
千代美に「迷惑になるからやめてくださーい!」と怒鳴られるまでお風呂バトルは続いたのだった。











それで私はすっかりのぼせてしまって自販機コーナーへ。
告白しろとか旅行中は盛り上がってチャンスだとか散々言われて頭の中ものぼせてる気がする。



「おい、大丈夫か?」

「なにが?」



スポーツドリンクを買ってフラフラと休憩コーナーの椅子へ向かって歩いていたら志波がいた。



「ふらついてる。顔も赤い」

「あ、大丈夫………お風呂ではるひ達とはしゃいでのぼせちゃっただけだから」

「風呂………」

「あ!なんか、今、想像したでしょ!」

「っ……してねぇ………」

「ふーん………ほんとにー?」

「おまえな………」

「あはははは!!」



などと、冗談でも言って誤魔化していないと
さっきの「告白」の事を意識しちゃう。

好きだけど
すごく好きなんだけど
それを言ったらどうなるんだろ?

もしも、もしもね、両思いだったら嬉しいけど………。
そうじゃなかったら、最悪でしょ?

はるひが「モタモタしてたら誰かに先越されるで」って言ってたけど、
こればっかりは早いもん勝ちってわけじゃない。
早くても遅くても志波がどう思うか、なわけだし………。

まだいいよ、私は。
だって、今「ごめん」って言われて気まずくなるより
今のままなら楽しくお喋りして笑っていられる………。






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