59.準備 |
勇気出すって言っても、 何かきっかけが無いと……。 やっぱり、クリスマス? でも、なにしたらいいの? 「むっふっふっ」 「むぅっ……笑わないでよ!はるひ!」 「が可愛いんやから仕方あらへん!」 「ちゃん、そこ、一つ飛ばしてるよ?」 「ええっ?!……あぁっ!ホントだ……あかりー、このままじゃダメ?」 「うーん、ちょっとダメ、かなぁ?」 「そうだよねぇ……ほどかなきゃ……」 「、頑張れ!」 「結花……私、やっぱり別のにしようかな」 「まだやり始めたばっかりなんだから、へこたれない!」 「はあい…………鬼マネージャー……」 「あら?、何か言った?」 「いえいえ……」 期末テスト一週間前の日曜日。 試験勉強も兼ねてって言って 家に集まってくれたあかり、はるひ、結花の3人。 クリスマスに何か気持ちを込めたプレゼントをあげたい というところまでは思いついたんだけど、 それってどんなもの?って決められなくて、みんなに相談した。 で、その時、あかりが提案してくれたのが、 今、私の手元でモシャモシャになってる この毛糸のかたまり。 「真っ直ぐ編むだけだから大丈夫だよ!」 あかりが簡単そうに言うから 私は人生初の手編みマフラーにチャレンジ中! なんだけど…… 「難しいよぉ……」 「最初だけだよ。慣れちゃえば簡単だからね」 「、マスコット上手だったやん。編み物やってすぐにできる」 「うぅ……でも、よく考えてみたら、付き合ってもいないのに手編みって重くないかなぁ?」 「シバやん、そんなんで引かへんて」 「うん。志波くん喜んでくれるよ、きっと」 「そうそう!、自信もって!」 「……分かった。私、頑張るっ!あの夕陽に誓うっ!!」 ムンッと小さくガンバルポーズ。 まだ昼間やん!ってはるひのツッコミに 皆でアハハと笑って盛り上がって。 でも体力でどうにかなるもんでは無いから厄介だ、編み物……。 私が毛糸と格闘している間、 みんなは勉強しつつ 学校や友達、 好きなタレント、 冬のファッション、 色んなことを話しながら、 でも、私の事も気にかけてくれる。 こんな風に相談できて 応援してくれる友達がいて良かった。 ホントみんな優しい。 「ねえ、ちゃん。なんて言って渡すの?」 「え?それはー……まだ、考えてない。なんで?」 「参考にしたいなって思って。やっぱり『好きです』とか?」 「ふぇっ?!」 「なあなあ、こんなんどうかな?『愛をこめて作りました!』」 「はるひー……それ絶対重いって……」 「なら、こんなんは?長ーく編んで『あなたを思いながら編んだら長くなってしまいました』……どや?」 「長いよ、それ、台詞が……」 「ねえねえ、長く編むなら『一緒に巻いてね(ハート)』とかは?」 「結花!それ、ええやん!」 「ちょっ?!」 「志波くんと巻くならすごく長く編まないとね」 「ちょっと!みんなっ!!」 「「「あはは」」」 まったく……好き勝手言って面白がっちゃって。 でも、これも仲良しだから、だよね? 遊ばれてるだけ……って気がしないでもないけど……。 でも本当になんて言って渡そう? うー……その時になれば何とかなる、よね? わ、渡すのさえ頑張れれば、きっと大丈夫、うん。 クリスマスパーティーか……。 あ!! 今年はドレス、どうしよう?? 去年と同じまま……って、ダメだよね。 同じの着るにしてもショールか何か羽織るものが必要なんだった。 あとはアクセサリーぐらいしろって藤堂に言われてたんだっけ。 アクセサリーってなに? ネックレスとイアリング??? ……お金、無い。 テスト前は部活がほぼ無いに等しい。 帰る時間もいつもより早い。 でも、冬の陽は短くて、 帰り道もあっという間に薄暗くなってきていた。 「週明けから期末テストだね。志波は勉強してる?」 「……なるようになる」 「してないんだ……補習になったら部活に影響するよ?」 「だな……」 「そうそう、少しはやらないと!」 「張り切ってんな、……」 いつもと同じだよーって答えたけど 実は相当張り切ってるんだな、私。 一つ頑張ろうって思うと 他の事も連鎖してテンションあがるのって 他の人も同じじゃないのかな? 「もう12月かぁ……あ、そういえば、はばたき山は初雪降ったらしいよ」 「へぇ……」 「市内はいつごろ降るかなぁ?森林公園なら早いかな?」 「テスト終わったら確かめに行ってみるか?」 「え?……っと、どこへ?」 「散歩」 散歩……って、 朝のトレーニングの話じゃなくて 一緒に出かけようってことだよね? それって それって でえと??? 行きたい! すっごく!! あ、でも…… 「あの……その散歩、冬休みになってからでも良い?」 「?……ああ」 うう……せっかく誘ってくれたのに なんでそんな先?って思っちゃうよね。 意味分からないって顔してる。 「ああああのね、テスト終わったらクリスマス前まで臨時バイトすることにしたの」 「バイト……?」 「うん」 「日曜に、か?」 「ううん、毎日。……でね、部活終わってすぐ行かなきゃだから、しばらく帰りも一緒に帰れないの……ゴメンね」 「そうか……」 あう……なんか空気が重い。 怒ってる? 一緒に帰れないって言ったから? 散歩、先延ばしにしちゃったから? 明るい話……楽しい話題……なんか無いの?? 「あ、あのね?バイト先、アンネリーなんだよ」 「……」 あ、れ……? 無反応? どうしちゃったんだろ? アンネリーなら志波も知ってる場所だし 「あそこか」って言ってくれると思ったのに。 「あの……志波?」 「あ?ああ……桐野のバイト先、だろ?」 「そうそう!結花と真咲先輩がバイトしてるお花屋さん!」 「ああ……」 いつも一緒に遊んでいる二人の話題を出せば 志波の気分も変わるかと思ったのに さっきより空気が重たくなってしまった。 なんで? どうしたらいいの? 「去年も同じ頃にバイトさせてもらったの。 店長さんも優しいし、結花と真咲先輩がいるから安心できるんだよね」 「……」 ジジッ ん? 何の音?? 何かが燃えるような……? 『家まで送るか?』 『大丈夫だよ』 『そうか……じゃあ、また明日』 『うん。また明日ね!』 志波の家と私の家への別れ道。 いつもはそんな会話があるのに 今日はそれも無かった。 「じゃ……」 志波はそれだけ言って スタスタと歩いて行ってしまった。 誰だって不機嫌になるよね。 誘ったのに断られたりしたら。 でも申し込んだばかりのバイトを休むわけにもいかないもん。 理由はちゃんと言ったんだから 志波も時間が経てば理解してくれるよね。 今日は仕方ない。 明日になったら気分も少し変わってるよね? 朝のランニングはテスト期間もバイトも関係なく続けるつもりだし 学校でだって会えるし また何か話をしようっと。 テスト終わってから私は頑張った。 部活のあと、ダッシュでバイト先へ。 家に帰ってからは編み物と格闘。 それに、朝のトレーニング。 前の日バイトと編み物で寝るのが遅くなっても 志波と二人で話が出来るのは朝しかないから 頑張って起きて走った。 志波も「バイト頑張れ」「無理すんな」なんて言ってくれたりして 分かってくれたんだなぁってホッとした。 ジジッ でも、時折聞こえるあの音はなんだろう? Next→ Prev← 目次へ戻る |