60.クリスマス(2年目) |
22日でアンネリーでの臨時バイトも終了。 そして今日23日はショッピングモールの年末セールに突撃…… ……したんだけど 「か……買えた」 セールでクリスマス前で休日で 三拍子揃ったショッピングモールは やっぱりすごい人・人・人で 一軒入って出てくるだけでグッタリ……。 でもなんとかお目当てのものは買えた。 今年はドレスの上に羽織るものを探して 白いフワフワで出来てるファーボレロをゲット。 はるひに『LISALISAなら外れは無い』って聞いて来たから アチコチうろうろしないで済んだのはホント助かった…… 「次はアクセサリー……さっさと買って帰ろうっと……」 人の多さに酔いそうになるけれど コレも明日のクリスマスパーティーのため! カワイイ……なんて言ってくれないだろうけど、 いや、面と向かって言われても困っちゃうんだけど、 でも、いつもと違うってちょっとでも驚いてくれたらいいな。 それから、プレゼント。 渡したらきっと驚くよね。 なんで?って。 気持ち、伝えたらどうなるんだろ? もしもダメでも友達のままでいてくれるかな…… …… ポスン 「ふぇ?」 「なーに、ボーっと歩いてたんだ?」 「あ、真咲先輩」 正面から来てたのに全然気付かなかった。 頭ポスってされなかったら衝突してたかも。 「先輩、今日バイト無いんですか?」 「明日と明後日に備えて息抜き中なんだよ」 「あー、クリスマス、忙しそうですもんねぇ……ご苦労様ですっ」 「おー、達はいいなぁ、パーティーだろ?」 「ですよー……って先輩だって3年間あったでしょ?」 「まーな」 せっかくのクリスマスなのにバイトか……。 先輩、有沢さんに怒られたりもするけど 実は頼りにされてるからなぁ。 ホントは、結花と一緒に、なんて思ってるんだろうな。 でも、はね学のパーティーに参加するのは無理だし…… 学年違うって共有できる時間が少なくて結構大変なのかも。 「先輩一人?結花のプレゼント買いに来たの?一緒に選んであげる!レッツゴー!」 「いや、買いに来たっつーか、ちょっと見に……っておい!待てって!!」 頑張れ!先輩! 私も頑張る! 「お、これなんてどーだ?」 「あ、いいかも!」 先輩ってば自分のは後で選ぶからって言って 私のアクセサリーを見てくれたりして 本当にお兄ちゃんみたいだなぁ。 優しい。 先輩を応援したいと思って連れて来ちゃったのに なんだかちょっと申し訳ない。 あ、でも、これ……ミンクボールイヤリング。 フワフワのファーのボールが さっき買ったボレロにも合うし 本当にいいかもしれない。 手にとって鏡の前で合わせて。 うん、プラプラって揺れるのが可愛い! 「おー、似合う似合う」 「うふふー、そうですか?じゃあ、これにしよっと! あ、先輩にも似合うかもよ、ほら!」 ふざけて先輩の耳にあててみたら 「そうだなー、じゃ、オレもこれにしよっと!」 「いやー!キモチワルイ!!」 「なんだとー!」 思いっきりデコピンされた。 チョップで反撃しようとしたら よけられて届かなくて…… 「先輩、逃げるな!」 「やだねー!……あ、勝己だ」 「そんな手には引っかからないもん!」 「ホントだって。ほら、あっちあっち!」 えー?ホントにー?って思いながら 先輩が指差してた方を振り向いたけど 「いないじゃん」 「ホントに店の外にいたんだって」 もう一度ガラスの外を見てみるけれど やっぱりいない。 「気付かなかったのかなー、あいつ」 先輩、嘘言ってるって感じじゃないから 本当にいたんだ、志波。 買物、だよね。 パーティのプレゼントでも買いに来たのかな? それで前を通りかかったのかもしれない。 「メリークリスマス!」 今年も教頭先生の挨拶というか注意?でクリスマスパーティーが始まった。 クリスマスのBGMが流れて会場内が一気に盛り上がる。 「メリクリ〜!」 「はるひ〜!メリクリ〜!」 「、めっちゃ可愛いやん」 「えへへ。今年も藤堂にお願いしちゃった」 去年は無理やり改造されたから どうなったのかさっぱり分からなかったんだけど 今年は予めお願いしておいたんだ。 髪もメイクもネイルも! おろした髪の先がクルンとなってて首元がくすぐったい。 グロスが気になってあんまり食べられない。 手もなんとなくパーにしてないと爪が気になるし……。 う…… なんか気合入れ過ぎかもしれない。 勇気出そうって思いついてから ずーっと気持ちが盛り上がっちゃってたけど、 冷静に考えてみたらやり過ぎなんじゃ……? 大丈夫かなぁ……私…………。 「メリークリスマス!ちゃん、はるひちゃん!」 「メリークリスマス!あかり!」 「ねえねえ、完成した?」 「うん。昨日の夜、フサフサつけた」 マフラーもなんとか完成した。 あとは志波に渡すだけ。 ちゃんと言えるかな、私? 渡せるかな、マフラー? うああ、緊張する。 「ちゃん?大丈夫?」 「ー、リラックスせな」 「そ、そうだよね……」 「そうや……あー、でもー、オロオロしてるもカワイイなぁ」 「はるひー」 「あはは!睨んでもこわない」 「うん、ホントだね」 「あかりまでー」 「大丈夫やって、、ホンマにカワイイから」 「そうだよ。絶対うまくいくから、ね!」 もー! なんか面白がられてる、絶対。 でも、応援もしてくれてるって分かるから なんかパワー出てきた。 うん。 オロオロしても仕方ない。 当たって砕けろだ! ……砕けたくないけど……。 「志波!メリークリスマス!」 「ああ………………」 志波を発見したのは パーティーが始まって しばらくしてから。 あかりやはるひと喋りながら ずっと姿を探してたんだ。 結局、その時はいなくって 遅刻して姿を現したときは やっと来た〜ってホッとした。 会場に入ってきたときはすっごく不機嫌そうだった。 こういうパーティー、面倒だって思ってるのかもしれない。 でも、野球部の人たちと話したり、 針谷とかクリスとかと話したりして、 少し和んだみたい。 独りにならないかな? 志波が独りになったら行こう! って思いながら、待ってたんだ。 で、今。 去年居眠りした椅子のある場所で 独りになった志波に話しかけることに成功。 「あの……えぇっと…………」 どうしよう。 やっぱりなんだか不機嫌そうに見える。 志波から流れてくる空気が重い。 眠いだけならいいんだけど 何かに怒ってたり イライラしてるんだとしたら やめた方がいいのかな、今日は……。 だけど…… 下を向いてマフラーの入っている紙袋を見る。 せっかく頑張ったんだもん。 最後まで頑張ってもいいよね。 紙袋を持つ手にギュッと力を入れて ムンッと上を向いて 志波を見上げた。 「なんだ?」 「うん、あのね……」 よーし、反応してくれた! 聞いてくれそうで、ちょっと安心したぁ……。 でも、 頬にかかってた髪を耳にかけてから 続きを言おうとしたら、 またあの音が聞こえたの。 ジジッ って。 キョロキョロ周りを見ても 何の音だか分からない。 「そのイヤリング……」 「え?あ、これ?昨日買ったばかりのホヤホヤなんだよー」 興味を持ってくれた事はドンドン話しちゃおう。 なんでも良いから喋っていれば重い空気も変わるかもしれない。 「ふわふわのボールがぷらーんってなるところがお気に入り。カワイイでしょー?」 「……」 「あの、えっとね、バイト代入ったから、昨日セールに行ってきたんだ」 「……元春と、か?」 「え?」 ピュー あれ?寒い。 どっかの窓が開いてるのかな? そう思ったのも束の間、 冷たい風が急に吹き始めたのとほぼ同時に 何かが爆発するような音が聞こえた。 何? 花火?なわけないよね? 周りを見ても 開いてる窓は無いし みんなが騒ぐ様子も無いし 気のせい??? 「帰る……じゃあな…………」 「え?ちょ、ちょっと待って!」 帰る、って? なんでそんなに怒ってるの?? わけが分からないよ。 私まだ何も言ってない。 それにこのままじゃダメなような気がする。 帰ろうとする志波の腕を掴んだら 止まってくれたんだけど…… 「もうオレにかまうな」 「どうして、そんな−−」 「アイツに頼まれたから、だろ?」 「アイツ?」 「元春に頼まれたから」 「真咲先輩?」 「オレを野球部に戻すよう頼まれたから」 「頼まれたけど、でも、それだけじゃ−−」 「もういい……じゃ…………」 「ま、待って!!」 歩き出そうとする志波の腕を もう一回掴んだんだけど、 今度は「触らないでくれ」と 振り払われてしまった。 バサッ 振り払われた志波の手に当たって プレゼントの袋が床に落ちちゃった。 拾わなくっちゃ。 膝をついて 袋を両手で拾い上げて 胸に抱えて…… 遠ざかる足音。 なんで? どーして、こんな事になっちゃったのかなぁ? 顔が上げられない。 せっかく塗ってもらった マスカラが落ちちゃうよ、これじゃ…… Next→ Prev← 目次へ戻る |